概要
清熱止血(せいねつしけつ)とは、 熱邪や火熱によって損傷した血絡を冷まし、出血を止める治法である。 主として、血熱妄行(けつねつぼうこう)により出血を生じる病証に用いられる。
中医学では「熱盛は血を動かす」とされ、熱邪が血分に侵入すると血行が乱れ、 鼻・歯・咳・吐・便・尿などあらゆる部位から出血が起こる。 この場合、単に止血するだけでなく、熱を清し、血を涼し、出血の根本である熱邪を除くことが必要である。
主な適応症状
- 鼻出血(鼻衄)・歯齦出血
- 喀血・吐血・便血・尿血
- 月経過多・崩漏
- 皮下出血・紫斑
- 高熱・煩躁・口乾・舌紅・苔黄
- 脈数有力・または洪数
これらは、熱邪が血分に入り、血絡を損傷し血が妄行することによって起こる。 したがって清熱止血法は、熱を冷まし血を安定させて止血することを目的とする。
主な病機
- 血熱妄行:熱邪が血中に入り、血行が急激に盛んになり出血する。
- 火熱灼絡:火毒が血絡を損傷し、血液が外へ漏出する。
- 熱盛傷陰:熱邪が津液を損傷し、血が濃縮して血絡を破る。
そのため、単に止血薬を使うのではなく、清熱・涼血・解毒の薬を併用して、 根本の熱を取り除きながら血を鎮めることが重要である。
主な配合法
- 清熱止血+涼血:血熱が盛んで、皮下出血や月経過多があるとき(例:犀角地黄湯)。
- 清熱止血+瀉火解毒:熱毒による咽喉出血・歯齦出血(例:黄連解毒湯)。
- 清熱止血+養陰:熱盛による陰虚を伴う場合(例:清営湯)。
- 清熱止血+潤肺:肺熱による咳嗽喀血(例:泻白散+側柏葉)。
- 清熱止血+化瘀:出血後に瘀血が停滞する場合(例:桃仁承気湯+地黄)。
代表的な方剤
- 十灰散(じっかいさん):清熱瀉火・涼血止血。上部出血(吐血・喀血・鼻出血)に用いる。
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):実火・熱毒による出血・煩躁に用いる。
- 犀角地黄湯(さいかくじおうとう):血熱妄行・出血性疾患に適す。
- 茅根竹葉湯(ぼうこんちくようとう):清熱生津・涼血止血。口渇・尿血・喀血などに。
- 小薊飲子(しょうけいいんし):清熱利水・涼血止血。熱淋・血尿などに応用。
- 四生丸(しせいがん):清熱涼血・止血。血熱による吐血・衄血に用いる。
臨床でのポイント
- 清熱止血は、熱盛による出血(実熱性出血)が対象。
- 寒凝や虚寒による出血(寒証)には用いない。
- 出血部位により薬味を選択する(肺熱→側柏葉、胃熱→黄連、血熱→生地黄など)。
- 出血後の陰傷には、生津・養陰薬を併用する。
- 止血と同時に熱毒を清解することが再発防止に重要。
まとめ
清熱止血法は、 血熱・火熱が血絡を損傷して出血を引き起こす病証に対して、 熱を清し血を涼して止血する治法である。 代表方剤は十灰散・犀角地黄湯・小薊飲子・黄連解毒湯などで、 鼻出血・喀血・血尿・月経過多・紫斑など、熱性出血性疾患に広く応用される。
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