概念
鎮静降圧（ちんせいこうあつ）とは、 肝陽上亢や肝風内動によって生じる興奮・不安・高血圧・眩暈などを鎮め、血圧を安定させる治法である。 主に肝陽上亢・肝火上炎・陰虚陽亢・肝風内動などの病機に対して用いられる。 すなわち、「肝を平め、陽を鎮め、風を熄め、神を安んずる」ことを目的とする。
所属
平肝熄風法の一分法に属し、特に肝陽上亢による高血圧・動悸・不眠などに応用される。
効能
- 鎮静安神：精神的興奮・不安・不眠を鎮める。
- 平肝潛陽：肝陽の上昇を抑え、頭痛・眩暈・顔面紅潮を軽減。
- 清熱熄風：肝火や内風を鎮め、動悸・振戦などを防ぐ。
- 降圧安定：血管拡張と神経安定により血圧を下げる。
主治
主として以下のような病態を治す。
- 肝陽上亢による高血圧、めまい、頭痛、耳鳴
- 神経過敏、不眠、多夢、焦燥、イライラ
- 肝風内動による手足の振戦、けいれん
- 動悸、顔面紅潮、肩こりなどを伴う血圧上昇
病機解説
- 肝陽上亢：肝陰不足により陽気が抑えられず、上衝してめまい・頭痛・高血圧を起こす。
- 肝火上炎：情志不暢・ストレスなどで肝火が盛んになり、心神不安や不眠を伴う。
- 肝風内動：肝陽や熱が極まって風を生じ、動揺・振戦を呈する。
- これらに対して鎮静降圧法は、肝を平め、風を熄め、神を安んじて血圧を穏やかにする。
代表方剤
- 天麻鉤藤飲（てんまこうとういん）：肝陽上亢による高血圧・頭痛・めまい。
- 釣藤散（ちょうとうさん）：高血圧傾向の頭痛・肩こり・不眠。
- 鎮肝熄風湯（ちんかんそくふうとう）：肝腎陰虚・肝陽上亢による頭重・しびれ・振戦。
- 黄連解毒湯（おうれんげどくとう）：肝火上炎による興奮・不眠・顔面紅潮。
- 羚角鉤藤湯（れいかくこうとうとう）：熱盛による肝風動風、けいれん・高熱性昏睡。
応用
- 高血圧症、脳動脈硬化症
- 自律神経失調症、更年期障害
- 不眠症、神経性頭痛、神経過敏
- 脳卒中予防、めまい・耳鳴
使用上の注意
- 血圧が低い場合や陰虚が著しい場合は、過度の降圧薬性を避ける。
- 肝陽上亢の根本には陰虚があるため、必要に応じて滋陰薬を併用する。
- 単なるストレス性の一過性高血圧には使用を慎重にする。
まとめ
鎮静降圧法は、肝陽上亢・肝火上炎などによる高血圧や精神興奮を鎮める治法である。 平肝潛陽・熄風安神の効能を兼ね、「肝を鎮め、風を止め、血圧を安んずる」ことを目的とする。 代表方剤は天麻鉤藤飲・釣藤散・鎮肝熄風湯である。
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