概要
通淋止痛（つうりん しつう）は、膀胱・尿道の気化失調や湿熱の鬱結により、排尿困難・排尿痛・尿道灼熱などの症状が現れる場合に、
水道を通暢し、気血の鬱滞を解き、疼痛を軽減する治法である。
主に淋証（尿路系疾患）における痛淋・熱淋・血淋・石淋などに応用される。
主な適応症状
- 排尿時の疼痛・灼熱感
- 尿道や下腹部の不快感・尿意切迫
- 尿が少ない・尿が滴下する・尿線が細い
- 尿が濁る、血尿、砂状沈渣
- 舌紅、苔黄膩または薄黄、脈滑数
主な病機
- 湿熱下注 → 膀胱気化不利 → 小便短赤・灼痛
- 気滞血瘀 → 尿道閉塞・排尿困難・疼痛
- 熱毒鬱結 → 膀胱失通 → 尿急・尿痛・尿血
- 腎虚失化 → 排尿力低下・残尿感
主な配合法
- 通淋止痛＋清熱利湿：湿熱壅盛による熱淋・尿痛に（例：八正散）。
- 通淋止痛＋活血化瘀：血瘀による血淋・尿中血塊（例：小薊飲子）。
- 通淋止痛＋理気化滞：気滞による尿閉・腹満（例：沉香散）。
- 通淋止痛＋清熱解毒：熱毒による尿赤・膿尿（例：龍胆瀉肝湯）。
- 通淋止痛＋利水通調：尿量減少・浮腫を伴う場合（例：五苓散）。
代表的な方剤
- 八正散（はっせいさん）：湿熱壅滞による熱淋・尿痛。清熱利尿・通淋止痛の代表方。
- 龍胆瀉肝湯（りゅうたんしゃかんとう）：肝胆湿熱が膀胱に移り、尿赤・灼痛を呈する場合。
- 小薊飲子（しょうけついんし）：血熱による血淋・尿血。清熱涼血・通淋止血に優れる。
- 石苇散（せきいさん）：石淋（尿路結石）による排尿困難・尿痛。
- 清心蓮子飲（せいしんれんしいん）：心腎不交による小便短赤・煩熱に応用。
臨床でのポイント
- 通淋止痛の核心は、膀胱気化の回復と湿熱の排出である。
- 急性の尿道炎・膀胱炎・尿路結石など、疼痛や灼熱を伴う排尿障害に広く用いられる。
- 慢性化した場合は、気滞・血瘀・腎虚を伴うことが多く、適宜補益や活血法を併用する。
- 現代医学では、尿路感染症・前立腺炎・膀胱結石などに相当する。
まとめ
通淋止痛は、膀胱・尿道における湿熱や気滞・瘀血によって起こる排尿痛・尿閉・尿血などの症状に対して、
水道を通暢し、熱を清し、痛みを止める治法である。
八正散や龍胆瀉肝湯などが代表的であり、病因に応じて清熱・利湿・活血などを組み合わせて応用する。
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