労倦とは

労倦（ろうけん）とは、過度の労働・過労や長期の精神的緊張により、気血が消耗し、身体や精神に疲労が蓄積した状態を指します。
主に気血不足や心脾両虚に関連し、倦怠感、息切れ、食欲不振、集中力低下などが現れます。慢性的になると、身体の免疫力や精神の安定も損なわれます。

原因

• 過労・長時間労働： 気血を消耗し、脾胃の生化機能や心の安定を損なう。
• 精神的緊張・思慮過度： 長期の精神活動が心気・脾気を消耗する。
• 慢性病後の回復不十分： 疾病や手術後に気血が十分に回復せず、労倦が起こる。
• 不規則な生活・睡眠不足： 生体リズムの乱れにより気血生成が低下する。

主な症状

• 全身の倦怠感・力が入らない
• 息切れ・動悸・疲れやすい
• 食欲不振・消化不良・腹部膨満
• 頭重・めまい・集中力低下
• 精神的倦怠・気分の落ち込み・不安感
• 脈は虚・細・弱

舌・脈の所見

• 舌： 淡、苔薄白、場合により乾燥
• 脈： 細・弱・虚

病理機転

• 長期の労働や精神的緊張で気血が消耗し、脾胃の生化機能が低下する。
• 気血不足は全身の臓腑活動を低下させ、倦怠感・息切れ・心悸などを招く。
• 慢性化すると心脾両虚や肝気鬱結を伴い、精神的倦怠や不眠・焦燥感が現れる。

代表的な方剤

• 補中益気湯（ほちゅうえっきとう）： 気虚による倦怠・疲労・食欲不振に。
• 八珍湯（はっちんとう）： 気血両虚による疲労倦怠・顔色不良に。
• 帰脾湯（きひとう）： 心脾両虚による動悸・不眠・多夢・倦怠に。
• 炙甘草湯（しゃかんぞうとう）： 脈結代・不整脈を伴う場合の補気養血に。

治法

• 益気養血： 消耗した気血を補い、全身の倦怠感を改善する。
• 健脾養心： 脾胃を補い、心神の安定を図る。
• 安神補益： 精神的疲労や不眠を改善する。

養生の考え方

• 十分な休息と睡眠を確保し、過労を避ける。
• 栄養バランスの良い食事を取り、気血を補う。
• 軽い運動や深呼吸で気血の巡りを促す。
• 過度な思慮や精神的緊張を避け、心身の安定を保つ。

まとめ

労倦とは、過労や精神的緊張により気血が消耗し、身体と精神に倦怠感が現れる状態です。
特徴は全身の疲労・息切れ・食欲不振・動悸・不眠などで、治療の基本は「益気養血」「健脾養心」であり、気血の充実と心身の回復を図ることが要点です。