甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)
出典『金匱要略』婦人雑病篇
分類安神剤(養心安神・鎮静剤)
保険適用エキス製剤甘麦大棗湯(ツムラ54、クラシエ54など)
構成生薬甘草(かんぞう)・小麦(しょうばく)・大棗(たいそう)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能養心安神和中緩急
主治精神不安、情緒不安定、驚きやすい、ヒステリー様症状、不眠、神経過敏など。
病機心陰不足肝気不和により、精神が不安定となり、心神が安らがない状態。
現代的適応神経症、不眠症、更年期障害、小児夜泣き、チック症、ヒステリー、ストレス性の情緒不安定など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度またはやや虚。
精神的刺激に敏感で、泣きやすい・怒りやすい・驚きやすい。
不眠・動悸・不安・ため息などを伴う。
体質傾向情緒不安定で神経が繊細。
ストレスに弱く、疲労や緊張で症状が悪化する傾向。
舌診淡紅舌、薄白苔または無苔。
脈診細または弦、やや弱。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
甘草補中緩急、調和諸薬。精神の興奮を鎮め、全体を調整する。
小麦養心安神、除煩。心陰を養い、焦躁感や不安を和らげる。
大棗補中益気、和営安神。精神安定作用を助ける。


🩺 現代医学的な理解

  • 鎮静・抗ストレス作用(中枢神経系の興奮抑制)
  • 自律神経調整作用(交感神経過緊張の緩和)
  • 抗不安・抗うつ作用
  • ホルモンバランス調整(更年期症状の改善)
  • 睡眠リズム改善(軽度の不眠に効果)


⚠️ 使用上の注意

  • 甘草による偽アルドステロン症に注意(長期使用・他方剤併用時)。
  • 甘味が強く、糖尿病患者には慎重投与。
  • 強い抑うつや幻覚・妄想などの重度精神症状には不適。


💬 臨床応用例

  • 不眠・不安・情緒不安定
  • 更年期障害の神経症状
  • ヒステリー・ヒステリー球(咽喉頭異常感)
  • 神経症・パニック障害
  • 小児の夜泣き・チック症・多動
  • 月経前症候群(PMS)で情緒不安定な場合


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
加味逍遙散いらいら・のぼせ・月経不順など肝鬱・血虚傾向に適す。
女性のPMS・更年期障害に頻用。
抑肝散神経過敏・興奮・怒りっぽさを鎮める。小児・高齢者の神経症に多用。
帰脾湯不眠・健忘・倦怠を伴う心脾両虚に使用。精神的疲労型。
酸棗仁湯虚弱体質で寝つきが悪く、動悸・盗汗を伴う不眠に使用。


📖 メモ

  • 「女性のヒステリー」「子どもの夜泣き」「ストレス性不眠」の三大応用で知られる。
  • 身体症状よりも精神的・情緒的な不安定に重点を置く。
  • 作用は穏やかで、副作用が少なく、長期服用しやすい。
  • 精神安定剤を使いたくない場合の代替としても用いられる。
  • 小児や高齢者にも安全に使える方剤。

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