潤腸止痛とは

概要

潤腸止痛(じゅんちょうしつう)とは、腸を潤して便通を促し、便秘や腸内の乾燥による疼痛を和らげる治法である。 腸が乾燥すると便秘・腹痛・腹部膨満・裂肛などが生じるため、潤腸止痛法は潤腸・通便・止痛の三要素を同時に達成することを目的とする。

主として、陰虚血虚津液不足による便秘や腸内乾燥が原因の腹痛、特に高齢者・産後・慢性病後の便秘性疼痛に応用される。 潤腸止痛法では、津液を補い腸道を潤すことで便通を改善し、乾燥や硬結による疼痛を緩和することが基本である。



主な適応症状

  • 便秘・大便硬結・排便困難
  • 腹部膨満・腹痛・裂肛
  • 口渇・喉の乾き・皮膚乾燥
  • 舌紅・苔少・脈細または数
  • 慢性便秘による疲労感や食欲低下
  • 陰虚・血虚による便秘や乾性便秘

これらは、腸内の津液不足陰血不足による潤い不足が原因で生じる。 潤腸止痛法は、腸を潤し便通を整えることで疼痛を止める



主な病機

  • 陰血不足 → 腸道乾燥 → 便秘・腹痛。
  • 津液枯渇 → 大便硬結 → 排便困難・裂肛。
  • 気血虚弱 → 腸の通調不足 → 腹部膨満・便秘。

潤腸止痛法では、腸道の潤いを回復し、便を軟化させ、排便時の痛みを軽減することを目的とする。



主な配合法

  • 潤腸止痛+養陰潤燥:陰虚による乾性便秘・腹痛(例:麻子仁丸・増液湯)。
  • 潤腸止痛+補気養血気血不足・慢性便秘に伴う倦怠感(例:潤腸湯+補中益気湯)。
  • 潤腸止痛+活血化瘀瘀血に伴う腹痛・便秘(例:芎帰膠艾湯・血府逐瘀湯)。
  • 潤腸止痛+清熱潤燥熱結便秘・乾燥便秘(例:麻子仁丸+清営湯)。
  • 潤腸止痛+理気止痛気滞による腹部膨満・疝痛(例:天台烏薬散・枳実導滞湯)。


代表的な方剤

  • 麻子仁丸(ましにんがん):潤腸通便・止痛。陰虚・血虚による便秘・腹痛に適す。
  • 潤腸湯(じゅんちょうとう):潤腸止痛・補気。慢性便秘・腹部膨満・硬便に用いる。
  • 増液湯(ぞうえきとう):滋陰潤腸・通便。津液不足・口渇・便秘に応用。
  • 芎帰膠艾湯(きゅうきょうかつがいとう):養血活血・潤腸止痛。瘀血性便秘・腹痛に用いる。
  • 血府逐瘀湯(けっふちくおとう):活血化瘀・通便止痛。瘀血停滞による便秘・腹痛に適す。


臨床でのポイント

  • 潤腸止痛は、腸内乾燥や陰虚血虚による便秘性疼痛に応用される。
  • 便の硬さ・排便困難・腹痛の有無で方剤を選ぶ。
  • 陰虚が主体の場合は滋陰潤腸薬を中心に、血虚や気虚を伴う場合は補血・補気薬を併用する。
  • 慢性便秘や高齢者の便秘には、通便作用と止痛作用の両立が重要である。
  • 便秘が熱結による場合は清熱潤腸を組み合わせる。


まとめ

潤腸止痛法は、腸を潤して便通を改善し、便秘や腸内乾燥による腹痛を緩和する治法である。 代表方剤は麻子仁丸潤腸湯・増液湯・芎帰膠艾湯などで、陰虚血虚津液不足・慢性便秘に広く応用される。 その要点は、腸道を潤し、便通を整え、疼痛を止めることにある。

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