📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう) |
| 出典 | 『金匱要略』「脚気湿痺病篇」 |
| 分類 | 祛風除湿剤・温経散寒剤・強筋骨剤 |
| 保険適用エキス製剤 | 桂芍知母湯(ツムラ68、クラシエ68など) |
| 構成生薬 | 桂枝・芍薬・知母・麻黄・防風・附子・生姜・甘草・白朮 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 温経散寒、除湿清熱、通絡止痛。 |
| 主治 | 慢性の関節痛・神経痛・下肢痛・腰痛などで、関節が腫れて熱感や重だるさがある。 または冷えると痛みが増し、温めるとやや楽になるタイプ。 |
| 病機 | 風寒湿邪が経絡に留まり、気血の流れが滞り、関節や筋肉に疼痛・腫脹・重だるさを起こす。長期化すると熱化し、局所の腫脹・熱感を伴うようになる。 桂枝・附子で温経散寒し、知母で清熱・滋陰し、芍薬で筋を和し痛みを緩和する。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容(詳細) |
|---|---|
| 典型的症状 | 膝・腰・肩などの関節が腫れて痛む。 熱っぽく腫れているが、冷えるとさらに痛みが増す。 体が重く、四肢に倦怠感がある。 朝のこわばり、歩き出しの痛みが強い。 |
| 体質傾向 | 中等度以上の体力。 湿気や冷えに弱く、関節・筋肉に痛みを感じやすい。 慢性関節炎や神経痛、筋肉痛などを繰り返す傾向。 |
| 舌診 | 舌質はやや紅または淡紅、苔は白〜黄白でやや厚い。 |
| 脈診 | 弦または渋、やや沈。 |
💊 構成生薬と作用(詳細)
| 生薬 | 主要作用 |
|---|---|
| 桂枝 | 温経通陽、発汗解肌、行気止痛。冷えによる痛みを和らげる。 |
| 芍薬 | 養血柔筋、緩急止痛。筋肉のこわばりや痙攣を緩和する。 |
| 知母 | 清熱瀉火、滋陰潤燥。関節の熱感・炎症・腫れを鎮める。 |
| 麻黄 | 発汗解表、宣通経絡。風湿を除き、関節の閉塞感を改善。 |
| 防風 | 祛風除湿、止痛。風寒湿痺による疼痛を軽減。 |
| 附子 | 温陽散寒、補火助陽、止痛。冷えによる痛み・麻痺感を改善。 |
| 白朮 | 健脾燥湿、益気利水。体内の湿邪を除き、筋骨を強化。 |
| 生姜 | 温中散寒、調和薬性。 |
| 甘草 | 調和諸薬、緩急止痛。 |
🩺 現代医学的な理解
- 抗炎症・鎮痛作用:知母・防風・芍薬に抗炎症・鎮痛作用があり、関節炎・神経痛の疼痛を軽減。
- 血流改善作用:桂枝・麻黄・附子が末梢循環を改善し、冷えによる痛みを緩和。
- 自律神経調整:芍薬・甘草の鎮痙作用により筋緊張を緩和し、神経の興奮を抑制。
- 利尿・除湿作用:白朮・防風・知母により体内水分の滞りを改善し、関節の腫脹・むくみを軽減。
⚠️ 使用上の注意
- 冷えが強すぎる虚証タイプ(体力低下・倦怠感・下痢傾向)は慎重投与。
- 発汗過多・乾燥体質の人は麻黄や附子の温熱作用が強すぎることがあるため注意。
- 腎機能障害・心疾患のある人は医師の管理下で使用。
- 高血圧・動悸がある人は麻黄の交感神経刺激作用に留意。
💬 臨床応用例
- 慢性関節リウマチ、変形性関節症、坐骨神経痛、腰痛。
- 足関節や膝関節の腫脹・熱感・疼痛。
- 寒冷・湿気で悪化する神経痛・肩こり。
- 脚気・下肢の冷えとだるさ・筋肉痛。
- 中高年女性の冷えを伴う関節痛・更年期性の腰膝痛。
🌱 類方鑑別
| 方剤名 | 鑑別点 |
|---|---|
| 防已黄耆湯 | 関節の腫れ・むくみが主体で、体力中等度以下の虚証向き。 |
| 真武湯 | 冷えと水滞による関節痛・倦怠・浮腫を伴う虚寒タイプに適す。 |
| 疎経活血湯 | 慢性の血行不良・冷え・疼痛に使われるが、熱感が少ない。 |
| 薏苡仁湯 | 湿重による筋骨痛・関節痛で、より利湿作用を重視する場合に適す。 |
📖 メモ(臨床的要点)
- 「冷え」と「熱」、「虚」と「実」が入り混じった関節痛に対して柔軟に対応できる方剤。
- 「痛みがあり、腫れて熱っぽいが、冷やすと悪化する」——この相反する特徴がある時が本方の目標。
- 「熱痺」「寒湿痺」「風湿痺」が長期化し、陰虚や血行不良を伴った状態に特に良い。
- 慢性関節炎の痛みの寛解維持、リハビリ期の疼痛管理などにも応用される。
- 附子・麻黄・知母の組み合わせにより、「温めながら冷ます」バランスを取っているのが最大の特徴。
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