補益心肺とは

概要

補益心肺(ほえき しんぱい)は、心気・肺気がともに不足し、呼吸・循環・精神活動が低下する病態に対して、心肺の気を補い、機能を回復させる治法である。特に久病・虚労・慢性呼吸器疾患や心肺虚弱体質に広く応用される。



主な適応症状

  • 動悸、息切れ、胸悶
  • 倦怠感、声に力がない
  • 自汗、容易に風邪をひく
  • 顔色蒼白または萎黄
  • 咳嗽・喘息が慢性化しやすい
  • 不眠・健忘・気力低下
  • 舌淡、苔薄白、脈虚弱



主な病機

  • 心気不足 → 血脈失養 → 動悸・健忘・不眠
  • 肺気不足 → 宣発粛降失調 → 咳嗽・息切れ・自汗
  • 心肺両虚 → 気血生化不足 → 倦怠・顔色萎黄



主な配合法

  • 補益心肺+補益脾胃:脾気虚が加わり、消化不良や倦怠が強い場合
  • 補益心肺+養陰生津:肺陰虚による乾咳・口渇を伴う場合
  • 補益心肺+安神:心虚による不眠・不安・健忘が著しい場合
  • 補益心肺+補益腎気:肺腎両虚による慢性咳嗽・喘息の場合



代表的な方剤

  • 人参養栄湯:心肺気虚・血虚を伴う慢性虚労、不眠・動悸・息切れ。
  • 生脈散:肺気陰両虚による咳嗽・自汗・倦怠。
  • 炙甘草湯:心気虚・心陰不足による動悸、不整脈。
  • 補中益気湯合生脈散:気虚が著しく、汗出・倦怠が強い場合。



臨床でのポイント

  • 補気薬(人参・黄耆・炙甘草)を中心に、養陰薬(麦門冬・五味子)を配合すると心肺の津液を保護できる。
  • 慢性呼吸器疾患(咳嗽・喘息・慢性気管支炎)や心虚による動悸・不眠に有効。
  • 長期虚労・術後衰弱・高齢者の心肺虚弱に適応する。
  • 心血虚が著しい場合は当帰・竜眼肉など養血薬を加えるとよい。



まとめ

補益心肺は、心肺気虚によって生じる動悸・息切れ・倦怠・自汗などの症状を改善する治法である。人参養栄湯・生脈散などが代表方で、補気・養陰・安神を兼ねることで心肺機能を回復させる。

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