📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう) |
| 出典 | 『金匱要略』 |
| 分類 | 瀉下剤(攻下・調和性のある緩下剤) |
| 保険適用エキス製剤 | 大黄甘草湯(ツムラ132、クラシエ132など) |
| 構成生薬 | 大黄(だいおう)・甘草(かんぞう) |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 瀉熱通便、潤腸止痛。 |
| 主治 | 実熱による便秘、腹満・腹痛。 大便秘結、口渇、腹部膨満など。 |
| 病機 | 陽熱の内結により腸内が燥熱し、腑気不通となった状態。 甘草を加えて瀉下と緩和の調和を図る。 |
| 現代的適応 | 便秘(特に実証タイプ)、急性の便秘、熱性疾患後の便秘、薬物性便秘、痔疾による排便困難など。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 使用目標(証) | 体力中等度以上。 実熱・便秘傾向。 腹部膨満・腹痛を伴うが、瀉下後は軽快する。 |
| 体質傾向 | 食欲旺盛で便秘がち、口渇・のぼせを伴う実証タイプ。 |
| 舌診 | 紅舌、黄苔または厚苔。 |
| 脈診 | 実または沈実。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬名 | 主要作用 |
|---|---|
| 大黄 | 瀉下・清熱作用。腸内の熱と滞積を除き、排便を促す。 |
| 甘草 | 緩和・調和作用。大黄の峻下作用を和らげ、腹痛を防止する。 |
🩺 現代医学的な理解
- 腸管蠕動促進作用(大黄のセンノシドによる作用)。
- 抗炎症・抗菌作用(大黄・甘草ともに腸内炎症を鎮める)。
- 緩和な瀉下作用と腹部不快感の軽減(甘草による調整)。
- 肝胆系の排泄促進作用(胆汁分泌促進)。
⚠️ 使用上の注意
- 下痢・腹痛を起こす場合は減量または中止する。
- 虚弱体質・高齢者・妊婦では慎重投与。
- 甘草の長期使用により偽アルドステロン症に注意。
- 大黄の連用により腸管の慣れが生じることがある。
💬 臨床応用例
- 実熱性の便秘(腹部膨満・腹痛を伴う)
- 痔疾による排便困難
- 薬物性便秘(鎮痛薬・抗コリン薬など)
- 熱病・発熱後の便秘
- 腹部膨満感・のぼせを伴う便秘
🌱 類方鑑別
| 比較方剤 | 相違点 |
|---|---|
| 調胃承気湯 | 大黄・甘草に芒硝を加え、より強い便秘・熱結に適応。 |
| 大承気湯 | 石膏・厚朴などを加え、腹満・高熱・煩躁を伴う重実証に使用。 |
| 麻子仁丸 | 虚弱体質や老人の便秘に用いる潤下剤。乾燥・虚証傾向に適す。 |
| 潤腸湯 | 陰虚や血虚による便秘に使用。大黄甘草湯よりも穏やか。 |
📖 メモ
- 大黄と甘草のみの二味方で、シンプルながら応用範囲は広い。
- 便秘を主症状とする「実証」に用いられる基本方剤。
- 大黄の峻下を甘草が緩和し、下しすぎず、腹痛を起こしにくい。
- 瀉下後に腹痛・腹満が軽減するタイプに最適。
- 「まず大黄甘草湯で通じをつけて様子を見る」という初期治療にも利用される。
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