実熱とは

実熱とは、体内に強い熱邪が存在し、正気がまだ比較的保たれている状態で出現する熱証を指す中医学の病証です。
外感熱邪の侵入、あるいは内生の火熱が盛んになることで発生し、「熱が強く、勢いがあり、症状が激しい」ことが特徴です。

主な原因

• 外感熱邪： 風熱・暑邪・温邪などが体内に侵入し、裏に伝化して熱が盛んになる。
• 内生火熱： 情志鬱結、飲食不節（辛辣・酒・脂濃）により火熱が内生。
• 痰・瘀・食積の鬱結： 邪が停滞し、久して化熱・化火。
• 臓腑実熱： 心火・肝火・胃火・肺熱など。

病理機転

• 熱邪が盛ん → 気血の運行が亢進・乱れ。
• 津液が消耗 → 口渇・便秘・尿短赤。
• 神明が擾乱 → 煩躁・不眠・譫語。
• 血分に及ぶと → 出血・斑疹・高熱。

主な症状

• 高熱、発熱持続
• 顔面紅潮、目赤
• 強い口渇（冷飲を欲する）
• 煩躁、怒りやすい、不眠
• 便秘、尿短赤
• 汗多または無汗

舌・脈の所見

• 舌： 紅〜深紅、苔黄厚または黄膩
• 脈： 洪・数・滑・実

関連する代表的証型

• 陽明実熱： 大熱・大汗・大渇・大脈。
• 肝火上炎： 頭痛、目赤、怒りやすい。
• 心火亢盛： 口舌生瘡、煩躁、不眠。
• 胃腸実熱： 口臭、便秘、腹満。
• 痰熱： 咳黄痰、胸苦、煩躁。

代表的な方剤

• 白虎湯： 気分実熱。
• 黄連解毒湯： 三焦実火。
• 承気湯類： 腑実熱・便秘。
• 竜胆瀉肝湯： 肝胆実火。

治法

• 清熱瀉火： 盛んな火熱を除く。
• 瀉下通腑： 腑実を解き、熱を外に出す。
• 涼血解毒： 血分の熱を冷ます。
• 清熱化痰： 痰熱を除去。

養生の考え方

• 辛辣・油膩・酒類を控える。
• 十分な水分補給で津液を守る。
• 情志の高ぶりを避け、肝火を鎮める。
• 発熱時は無理な補益を避ける。

まとめ

実熱は、邪気が盛んで正気がまだ保たれている熱証であり、症状は激しく明確です。
治療は清熱・瀉火・通腑・解毒を原則とし、虚熱との鑑別が極めて重要です。
誤って補法を用いると、かえって熱を助長するため注意が必要です。