胃熱上擾とは

胃熱上擾とは、胃に実熱または鬱熱が生じ、その熱邪が上逆して頭面・口腔・胸膈などを擾乱する病証を指します。
胃は本来、気機を下降させる臓腑ですが、熱がこもるとその下降作用が失調し、熱邪とともに気が上逆してさまざまな症状を引き起こします。

主な原因

• 飲食不節： 辛辣・油膩・甘味の過食、酒の多飲により胃に熱がこもる。
• 外感熱邪： 温熱邪が裏に入って胃に影響する。
• 情志失調： 肝鬱化火が胃に横逆し、胃熱を生じる。
• 陰液不足： 胃陰が損なわれ、虚熱が内生する。

病理機転

• 胃中に熱がこもり、腐熟機能が亢進・偏盛する。
• 胃の降濁作用が失調し、気と熱が上逆する。
• 上部を灼き、口腔・頭面・胸膈に熱症状を生じる。

主な症状

• 口渇・多飲、冷たいものを欲する
• 口臭、口内炎、歯肉腫痛
• 胃脘部の灼熱感・脹満感
• 悪心、嘔吐（酸臭・苦味を伴うことが多い）
• 顔面紅潮、煩躁感
• 便秘または便が臭く硬い

舌・脈の所見

• 舌： 紅、苔黄燥または黄厚
• 脈： 滑数、洪数

関連する病証

• 胃火上炎
• 実熱
• 熱邪上逆
• 肝胃不和（肝鬱化火を伴う場合）

治法

• 清胃瀉熱： 胃中の実熱を冷まし、火を下す。
• 降逆和胃： 胃気を下降させ、上逆を止める。
• 養陰生津： 熱によって損傷された胃陰を保護する。

養生の考え方

• 辛辣・油物・焼き物・酒を控える。
• 夜食・暴飲暴食を避け、食事量を整える。
• 苦味・清熱作用のある食材（苦瓜、菊花、大根など）を適度に摂る。
• 精神的な緊張や怒りを溜め込まない。

まとめ

胃熱上擾は、胃にこもった熱が上逆することで生じる実熱性の病証です。
治療は清胃瀉熱・降逆和胃を中心とし、飲食と情志の調整が極めて重要です。
生活面では「胃に熱を生じさせない習慣作り」が再発防止の鍵となります。