【概要】
益肺補腎とは、肺と腎を同時に補益し、呼吸機能と生命根本の虚損を回復させる治法である。
肺は「気を主り」、腎は「納気を主る」ため、両者は呼吸において密接な関係を持つ。
肺腎のいずれか、または両方が虚すると、呼吸は浅く不安定となり、慢性咳嗽・喘息・易疲労などが生じる。
本法は、久咳・久喘・慢性呼吸器疾患・老化・虚弱体質など、肺腎両虚を基盤とする病証に広く用いられる。
主な適応症状
- 慢性咳嗽・喘息・息切れ
- 声が低く弱い・話すと疲れる
- 動くと息が上がる
- 腰膝酸軟・冷え・倦怠感
- 病後・高齢者の呼吸機能低下
主な病機
- 肺気虚：宣発・粛降作用の低下により、咳嗽・息切れが生じる。
- 腎気虚：納気失調により、呼吸が浅く喘促する。
- 肺腎両虚：久病・老化・過労により上下が同時に虚する。
- 腎陰虚：虚熱を伴い、乾咳・咽乾・盗汗を呈する。
- 腎陽虚：冷え・無力感・息短を呈する。
主な配合法
- 益肺補腎＋補気：息切れ・倦怠感が主体。
- 益肺補腎＋納気平喘：動作時に喘が強い場合。
- 益肺補腎＋滋陰：乾咳・虚熱・口渇を伴う場合。
- 益肺補腎＋温陽：冷え・陽虚が明らかな場合。
- 益肺補腎＋止咳：久咳が主症のとき。
代表的な方剤
- 補肺湯：肺気虚による慢性咳嗽。
- 参蛤湯：肺腎両虚による久喘・息短。
- 金水六君煎：肺腎虚寒・痰を伴う咳喘。
- 七味都気丸：腎陰虚を伴う喘咳。
- 八味地黄丸：腎陽虚を伴う呼吸無力。
臨床でのポイント
- 急性咳喘ではなく、慢性・虚証に用いる。
- 痰湿・外邪が残存する場合は先に処理する。
- 肺のみ・腎のみの虚と鑑別する。
- 高齢者・虚弱者では漸補を原則とする。
- 生活指導（呼吸・保温・休養）との併用が重要。
まとめ
益肺補腎法は、肺の宣粛と腎の納気を同時に回復させ、呼吸の根本的安定を図る治法である。
慢性咳嗽・喘息・加齢や久病による虚弱に対し、長期的な体質改善と再発予防を目的として用いられる。
0 件のコメント:
コメントを投稿