補益心気とは

【概要】
補益心気とは、心の気を補い、その推動・統率・精神活動の機能を回復させる治法である。
心は「血脈を主り」「神を蔵す」臓であり、心気が充実してこそ、血行・意識・情緒・睡眠が安定する。
心気が虚すると、血の推動力が弱まり、精神活動も不安定となる。

本法は、過労・久病・加齢・情志消耗などによって心気が損なわれた状態に用いられ、動悸・息切れ・不安・健忘・不眠などを主とする虚証の改善を目的とする。

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主な適応症状

• 動悸・心悸亢進
• 息切れ・少し動くと疲れる
• 不安感・落ち着かない
• 健忘・集中力低下
• 不眠・眠りが浅い

これらは、心気虚を中心病機とする症候群である。

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主な病機

• 心気虚：血脈の推動力低下により、動悸・息切れが生じる。
• 心血不足：気虚が進行し、神の滋養が不足する。
• 気血両虚：久病・慢性消耗による心身衰弱。
• 心脾両虚：思慮過度・過労による心神不安。
• 心腎不交：長期虚損により不眠・不安を伴う。

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主な配合法

• 補益心気＋養血：動悸・健忘が強い場合。
• 補益心気＋安神：不安・不眠を伴う場合。
• 補益心気＋健脾：食欲不振・疲労感を伴う場合。
• 補益心気＋益腎：高齢者・慢性虚弱。
• 補益心気＋理気：気滞を伴う胸悶。

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代表的な方剤

• 炙甘草湯：心気虚・脈結代・動悸。
• 帰脾湯：心脾両虚・不眠・健忘。
• 養心湯：心気血虚による不安・動悸。
• 人参養栄湯：全身虚弱を伴う心気虚。
• 天王補心丹：心気陰両虚・不眠。

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臨床でのポイント

• 実邪（痰・瘀血・熱）がないことを確認する。
• 心気虚と心血虚の鑑別が重要。
• 急性不整脈や器質的心疾患は西洋医学的評価を優先。
• 精神安定には生活・睡眠指導が不可欠。
• 慢性例では長期的・漸進的補益を行う。

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まとめ

補益心気法は、心の推動機能と精神活動を支える気を補い、動悸・不安・不眠などの虚証を改善する治法である。
心血・脾気・腎気との関連を踏まえ、弁証に基づく併用治法が治療効果を高める。