芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)
出典『金匱要略』
分類補血止血剤(虚労性出血方)
保険適用エキス製剤芎帰膠艾湯(ツムラ89、クラシエ89など)
構成生薬当帰・芍薬・川芎・地黄・艾葉(がいよう)・阿膠(あきょう)・甘草


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能補血養血安胎止血
主治血虚による不正性器出血、月経過多、流産傾向、産後出血、皮下出血など。
病機血虚により血脈が損傷し、衝任不固となって出血が生じる。
「虚性出血」の典型。
現代的適応貧血傾向を伴う子宮出血、月経過多、不正出血、産後出血、流産予防、血尿、痔出血など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度〜やや虚。
血虚傾向(顔色不良・めまい・倦怠)を伴う出血。
出血は鮮紅色または淡色で、量が多く止まりにくい。
体質傾向虚弱体質、冷え性、疲れやすい、皮膚蒼白。
舌診淡白舌、薄白苔、舌質やや乾。
脈診細弱、沈細または虚軟。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
当帰・芍薬・川芎・地黄いわゆる「四物湯」の構成。血を補い、血行を調整する。
艾葉温経止血・安胎作用。冷えによる出血を防ぐ。
阿膠補血・止血・滋陰作用。出血を抑え、血を養う。
甘草調和作用。諸薬の性を和し、止血を助ける。


🩺 現代医学的な理解

  • 止血作用(血小板機能・血管壁強化)
  • 造血促進作用(赤血球・ヘモグロビン増加)
  • 子宮収縮抑制作用・安胎作用
  • ホルモン調整作用(エストロゲン・プロゲステロン系)
  • 抗貧血・抗炎症作用


⚠️ 使用上の注意

  • 実熱性・瘀血性の出血には不向き(逆に悪化することがある)。
  • 冷えのない体質・充実体質には適さない。
  • 出血が急激・大量の場合は他の止血法と併用が必要。
  • 阿膠により胃もたれが出る場合がある。


💬 臨床応用例

  • 不正性器出血・月経過多
  • 流産防止・切迫流産
  • 産後出血・悪露遷延
  • 貧血性のめまい・倦怠感
  • 血尿・血便・痔出血などの慢性出血
  • 紫斑病など体質的出血傾向


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
四物湯補血・調血が主。止血作用は弱い。
温経湯冷えによる月経不順や瘀血を伴う場合。止血よりも調経中心。
十全大補湯気血両虚で疲労が強い場合。止血作用はない。
当帰芍薬散冷え・貧血体質に伴う月経異常に用いるが、出血よりも調経方。


📖 メモ

  • 「補血止血」の代表方で、女性の虚性出血に広く用いられる。
  • 四物湯を基礎に、艾葉・阿膠を加えて止血力を高めた構成。
  • 虚証による出血において、補血と止血を両立する点が特徴。
  • 体力が低下し、顔色が悪く、出血が長引くタイプに適す。
  • 冷えによる流産・産後の出血など、婦人科領域で特に重用される。

0 件のコメント:

コメントを投稿