三焦気機失調(さんしょうききしっちょう) とは、三焦(上焦・中焦・下焦)の気の運行が失調し、気の昇降・出入・通調作用がうまく働かなくなった状態を指します。
三焦は全身の「気・血・水」の通路であり、臓腑の機能を統括・調節する要となるため、その気機が失調すると全身に多様な症状が現れます。
とくに、肝気鬱結・湿滞・痰阻・熱邪・気虚などが原因となり、上焦・中焦・下焦のいずれにも影響を及ぼします。
原因
- 情志の失調: 怒り・憂思・ストレスなどで肝気が鬱し、三焦の通調機能を阻害する。
- 飲食不節: 暴飲暴食や脂っこいものの過食により、中焦に湿滞・痰阻を生じ、気機が通じにくくなる。
- 外邪の侵襲: 風寒・湿熱などの邪気が三焦の通路に侵入して気の出入を妨げる。
- 気虚: 久病・過労により元気が衰え、三焦の気化作用が弱まり、昇降の力を失う。
主な症状
- 上焦: 胸悶・咳・咽喉閉塞感・頭重・顔面の紅または蒼白
- 中焦: 胸脇の張痛・脘腹膨満・食欲不振・悪心・嘔吐・便秘または軟便
- 下焦: 小便不利・浮腫・下腹の張り・経閉または月経不順
- 全身倦怠・気滞感・抑うつ・ため息
舌・脈の所見
- 舌: 舌質は淡または紅、苔は白・薄黄・湿
- 脈: 弦・滑・濡など、原因によって異なる
病理機転
- 三焦の気機(上昇・下降・出入・通調)が乱れ、全身の気血水運行が阻滞する。
- 肝気鬱結・痰湿阻滞・熱邪などのいずれも、三焦の気化を妨げる要因となる。
- 結果として、上焦不宣・中焦不運・下焦不利の三焦不通の症候を示す。
代表的な方剤
- 柴胡疏肝散(さいこそかんさん): 肝鬱気滞により三焦の通調が乱れた場合に。
- 逍遙散(しょうようさん): 肝鬱脾虚による三焦の失調・情志不安定・月経不順に。
- 平胃散(へいいさん): 中焦湿滞による気機不暢・脹満に。
- 二陳湯(にちんとう): 痰湿が三焦を阻み、気の昇降を妨げる場合に。
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう): 肝胆湿熱による三焦不利・口苦・脇痛に。
治法
- 疏肝理気: 肝鬱による気機阻滞を解消する。
- 健脾化湿: 中焦の運化を促進し、湿滞を除く。
- 利気通調: 三焦の気化機能を回復し、昇降出入を調える。
- 調和三焦: 上・中・下焦を連動させ、気血水の流れを円滑にする。
養生の考え方
- 情志の抑圧を避け、心をのびやかに保つ(「気の滞り」を作らない)
- 軽度の運動や深呼吸で気の流れを整える
- 清淡・温和な食事を心がけ、脂っこい・辛いものを控える
- 十分な睡眠と休養をとり、過労を避ける
- 適度な発汗・半身浴で気の循環を助ける
まとめ
三焦気機失調とは、三焦の気化と通調作用が乱れた結果、全身の気血水の運行が阻害される病態です。
治法の基本は「疏肝理気」と「調和三焦」であり、三焦の昇降出入を円滑にし、全身の調和を回復させることが要点です。
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