帯下(たいげ)とは、女性の腟から排出される分泌物(おりもの)が異常に増え、色・質・臭いが変化し、日常生活に支障をきたす状態を指す中医学の病証用語です。
帯下は通常、生理的に分泌されるものですが、脾腎虚弱・湿熱下注・肝鬱気滞・寒湿困脾などの病因により量の増加や性状の変化を起こします。
主な原因
- 脾気虚弱: 運化失調により水湿が停滞し、帯下が淡白・清稀で量が多くなる。
- 腎陽虚・腎気虚: 固摂作用が弱まり、帯下が止まりにくく、冷感や腰膝酸軟を伴う。
- 肝鬱気滞: 気機阻滞により帯下が周期性に増減し、情緒によって悪化。
- 湿熱下注: 感染や過湿環境、辛辣・酒色過多により黄色・粘稠・臭気のある帯下となる。
- 寒湿困脾: 寒湿が経帯に侵入し、清稀で薄い帯下が持続する。
病理機転
- 帯脈の統制失調により、湿濁が下注して帯下が増える。
- 脾虚では水湿が運化されず、帯下が量多く薄くなる。
- 湿熱では湿と熱が結び、帯下が粘稠で黄色・臭気を呈する。
- 腎虚では固摂不固により、慢性で止まりにくい帯下が持続。
主な症状
- 帯下量の増加、色や性状の変化(白色・黄色・濃厚・泡沫状・粘稠など)
- 外陰部の痒み、灼熱感、臭気
- 腰痛、倦怠感、食欲低下、腹脹、むくみ
- 情緒不安定やストレスで悪化することも
舌・脈の所見
- 舌: 淡胖、白滑苔、または黄膩苔
- 脈: 濡、弱、弦滑、または滑数
証型別の鑑別
- 脾虚帯下: 白色で清稀、量が多く持続、食欲不振、倦怠感。
- 腎虚帯下: 淡白で止まりにくい、冷感、腰膝無力、頻尿。
- 湿熱帯下: 黄色粘稠、悪臭、外陰部掻痒、灼熱感、尿黄。
- 肝鬱帯下: 粘稠、色が変化しやすい、情志変動で発作的に増加。
代表的な方剤
- 完帯湯(かんたいとう): 脾虚湿盛の帯下に。
- 易黄湯(えきおうとう): 腎虚による帯下量多、慢性経過。
- 芤帰膠艾湯(こうききょうがいとう): 腎虚・気血不足で帯下が止まらない場合。
- 龍胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう): 肝胆湿熱による臭気帯下。
- 五苓散: 湿盛による浮腫・帯下。
治法
養生の考え方
- 冷えと湿気を避け、下腹部を温める
- 甘味・油物・乳製品・アルコールを控えめに
- 適度な運動で気血の巡りを改善
- ストレスコントロールと十分な休息
- 通気性のよい衣服を選ぶ
まとめ
帯下は、帯脈の統制失常と脾腎の虚弱や湿熱下注によって起こり、帯下の量・色・臭いの異常を呈します。
治療は健脾除湿・補腎固摂・清熱燥湿・疏肝解鬱を中心とし、証によって方剤を選択します。
生活養生では、冷えと湿を避け、ストレス管理と体力の養成が重要となります。
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