概念
固本培元(こほんばいげん)とは、身体の根本(=腎精・元気)を固めて養い、生命力の基礎を強化する治法である。
「本(ほん)」とは生命の根源、すなわち腎・精・元気を指し、「培元」とはそれを養い育てることを意味する。
長期の病後・加齢・虚損・過労などで腎精が消耗した際に、精・気・血を補い、体の根本的な回復を促すことを目的とする。
所属
固本培元法は、主に補益法に属し、特に補腎法・益気法・養血法・滋陰法などを総合的に用いる。
虚損・老衰・久病体弱・精血不足などの慢性虚証に対して応用される。
効能
- 腎精を補い、生命力の根本を強める。
- 元気を回復し、臓腑機能を安定させる。
- 精・気・血を充実させ、虚損を改善する。
- 免疫・体力・回復力を高め、老化を防ぐ。
- 慢性虚弱・病後虚脱を改善する。
主治
- 腎精不足:耳鳴・健忘・腰膝酸軟・性機能減退・不妊。
- 元気虚脱:倦怠・息切れ・食欲不振・虚汗。
- 久病虚損:体力低下・免疫力低下・顔色萎黄。
- 老衰体弱:腰膝無力・歩行困難・耳目不聡。
- 病後虚脱・術後回復期:体力消耗、元気回復不良。
病機
東洋医学では、「腎は先天の本」「脾胃は後天の本」とされる。
長期の病気や加齢、過労などにより、腎精が損耗し、元気が衰えると、臓腑機能が低下し、身体全体の回復が困難となる。
固本培元法では、腎精を補い・気血を充実させ・臓腑の働きを整えることで、生命活動の根源的な力を再び養うことを目的とする。
代表方剤
- 六味丸:腎陰虚による腰膝酸軟・めまい・耳鳴。
- 右帰丸:腎陽虚による冷え・陽痿・不妊。
- 八仙長寿丸:腎精不足・老化・虚弱。
- 人参養栄湯:気血両虚・疲労倦怠・食欲不振。
- 十全大補湯:気血両虚・慢性虚弱・病後回復。
- 地黄飲子:腎精虚衰による聴覚・言語障害。
臨床応用
- 慢性疾患・術後の体力回復。
- 老化防止・アンチエイジング・虚弱体質改善。
- 不妊・精力減退・月経不順などの生殖機能低下。
- 免疫力・自然治癒力の低下を伴う慢性症。
- がん・難病・長期療養後の全身虚弱。
使用上の注意
- 実熱・湿熱・瘀血などの実証には不適である。
- 補益薬の使用は、消化吸収機能(脾胃)の状態を考慮する。
- 短期間での即効性は乏しく、長期的に体質を改善する目的で用いる。
- 高齢者や虚弱者では、滋補薬の過用による停滞(痰湿・腹満)に注意する。
まとめ
固本培元法は、生命の根本である腎精・元気を補い固め、身体全体の回復力を高める治法である。
代表方剤は六味丸・右帰丸・人参養栄湯・十全大補湯などで、腎精の充実・気血の調和・臓腑機能の回復を図る。
慢性虚弱・老衰・長病後の回復に広く応用される、体の根を整える根本治療法である。
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