久坐とは

久坐(きゅうざ)とは、長時間座り続ける生活習慣や姿勢によって、気血の運行や臓腑機能が停滞する状態を指します。
中医学では「久坐傷肉」「久坐傷脾」とされ、特に脾・腎・肝への影響が重視されます。


主な原因

  • デスクワーク・運転: 長時間同一姿勢を保つことで気血が滞る。
  • 運動不足 筋肉活動が少なく、推動力が低下する。
  • 姿勢不良: 骨盤や腰部の歪みが気血循環を阻害。
  • 加齢 気血の巡りや筋力低下により影響を受けやすい。

病理機転

  • 長時間の座位により、気血の推動が低下する。
  • 脾の運化機能が弱まり、湿濁が内生しやすくなる。
  • 下半身の血行不良から、瘀血や水滞を生じる。
  • 腎気の推動力が弱まり、腰膝の失養を招く。

主な症状

  • 腰痛、腰の重だるさ
  • 下肢の冷え、しびれ、むくみ
  • 疲れやすい、倦怠感
  • 腹部膨満感、食欲不振
  • 便秘または排便不爽
  • 長時間座った後の立ち上がりの違和感

舌・脈の所見

  • 舌: 淡または暗、胖大、白膩苔
  • 脈: 緩・沈・渋

関連する証の鑑別

  • 気滞 張痛・膨満感が主体。
  • 瘀血 固定痛・刺痛・舌暗紫を伴う。
  • 脾虚 倦怠感・食後の眠気・下痢傾向。
  • 腎虚 腰膝酸軟・下肢無力が目立つ。

代表的な方剤

  • 補中益気湯 久坐による脾気虚・気陥に。
  • 血府逐瘀湯: 瘀血が顕著な場合。
  • 防已黄耆湯 下半身の重だるさ・浮腫を伴うとき。
  • 独活寄生湯: 腰痛・下肢痛を伴う慢性例。

治法


養生の考え方

  • 1時間に1回は立ち上がり、軽く体を動かす。
  • 腰・臀部・下肢を冷やさない。
  • 適度な散歩、体操、ストレッチを習慣化。
  • 甘味・脂っこいものの過食を避ける。

まとめ

久坐は、現代生活に多い生活習慣性の病因で、気血停滞・脾虚・腎虚を招きやすい状態です。
治療では行気活血健脾補腎を基本とし、生活習慣の改善が不可欠となります。
日常的に「動くこと」を意識することが、久坐による不調を防ぐ最良の養生です。

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