瘀血阻絡とは

瘀血阻絡とは、瘀血(血行障害)が経絡・脈絡を阻滞し、気血の流れが著しく停滞した状態を指す中医学の病証です。
経絡が閉塞されることで、局所に固定性の疼痛・しびれ・麻木・機能障害などが生じやすく、慢性化・難治化しやすい特徴があります。
久病入絡」「久痛入絡」の代表的病機でもあります。


主な原因

  • 久病・慢性疾患: 病邪が長期間停滞し、気血運行が悪化して瘀血が形成される。
  • 外傷・打撲: 血脈損傷により局所に瘀血が留まり、経絡を阻滞する。
  • 気滞血瘀 情志失調や寒邪などにより気機が滞り、血行が悪化する。
  • 寒凝・熱結: 寒邪による収縮、または熱邪による血の粘稠化で血行が阻害される。

病理機転

  • 気血運行失常 → 瘀血が形成 → 経絡・脈絡を閉塞。
  • 経絡不通 → 不通則痛 → 固定性・刺痛・夜間増悪。
  • 瘀血が長期化 → 絡脈深部まで侵入し、治癒しにくくなる。

主な症状

  • 刺すような痛み・固定性疼痛(部位が一定)
  • 夜間に痛みが増強する
  • しびれ・麻木・感覚鈍麻
  • 患部の硬結・腫塊・圧痛
  • 慢性疼痛、後遺症、関節可動域制限

舌・脈の所見

  • 舌: 暗紅、紫暗、瘀点・瘀斑、舌下静脈怒張
  • 脈: 渋脈、弦渋、細渋

関連する病証との鑑別

  • 気滞血瘀 疼痛はあるが移動性があり、情志変動で増減。
  • 寒瘀阻絡 冷えで悪化、温めると軽快。
  • 久病入絡 病程が極めて長く、虚実錯雑を伴う。

代表的な方剤

  • 血府逐瘀湯: 上焦・胸部の瘀血による疼痛・胸悶に。
  • 少腹逐瘀湯: 下腹部・婦人科領域の瘀血疼痛に。
  • 身痛逐瘀湯: 全身の慢性疼痛・関節痛に。
  • 通竅活血湯: 頭部・顔面の瘀血症状に。

治法

  • 活血化瘀 瘀血を除き、血行を回復させる。
  • 通絡止痛 経絡を通じて疼痛を緩和する。
  • 行気活血 気機を整え、血行を促進する。

養生の考え方

  • 冷えを避け、患部を温める。
  • 長時間同じ姿勢を避け、軽い運動で血流を促す。
  • 過度なストレス・怒りを控える。
  • 黒酢、玉ねぎ、紅花、ウコンなど活血作用のある食材を適量摂取。

まとめ

瘀血阻絡は、瘀血が経絡・脈絡を閉塞することで生じる慢性・固定性疼痛や機能障害を特徴とする病証です。
治療では活血化瘀通絡止痛を基本とし、病程が長い場合は久病入絡を考慮した段階的治療が重要となります。
生活面では血行を妨げない習慣づくりと冷えの回避が重要です。

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