長期臥床(ちょうきがしょう)とは、疾病・外傷・体力低下などを原因として、長期間にわたり臥位中心の生活を余儀なくされ、起立・歩行・日常活動が著しく制限された状態を指します。
中医学では、長期臥床は単なる生活状態ではなく、気血の運行低下や臓腑機能の衰退を招く重要な病因・病機と捉えられます。
古くより「久臥傷気」といわれ、久しく臥すことで正気が損なわれ、虚証・痰湿・瘀血を生じやすくなると考えられています。
主な原因
- 久病・重病: 慢性疾患や重篤な病により体力が消耗し、活動不能となる。
- 外傷・術後: 骨折・外傷・手術後の長期安静により臥床が続く。
- 高齢・虚弱体質: 加齢や先天的虚弱により起立・歩行能力が低下。
- 気血両虚: 気血不足により身体を動かす力が失われる。
病理機転
- 長期の不動により、気血の運行が停滞する。
- 脾の運化機能が低下し、痰湿が内生する。
- 腎精・腎気が消耗し、筋骨が衰える。
- 気虚により血行が弱まり、瘀血を生じやすくなる。
主な症状
- 全身倦怠感、無力感
- 筋力低下、筋萎縮、関節のこわばり
- 食欲不振、腹部膨満感(脾虚)
- 浮腫、痰が絡みやすい(痰湿)
- 冷え、腰膝酸軟、排尿・排便機能低下
舌・脈の所見
- 舌: 淡白、胖大、苔白膩
- 脈: 虚弱、沈細、または緩
関連する病証
代表的な方剤
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 気虚・臓器下垂・全身衰弱に。
- 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう): 気血両虚・久病後の虚弱に。
- 六君子湯(りっくんしとう): 脾虚・食欲不振・痰湿に。
- 八味地黄丸(はちみじおうがん): 腎虚を伴う高齢者の虚弱に。
治法
養生の考え方
- 可能な範囲で体位変換や関節運動を行う。
- 消化の良い温性の食事で脾胃を養う。
- 冷えと湿気を避け、身体を温める。
- 日光浴や会話などで精神活動を保つ。
まとめ
長期臥床は、気血の運行低下と臓腑機能の衰えを引き起こす重要な病因であり、久病虚労・脾腎両虚・痰湿・瘀血などを併発しやすい状態です。
治療は補虚を基本としつつ、巡りを回復させることが重要で、早期からの養生と適切な対応が回復の鍵となります。
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