熱結下焦とは

熱結下焦とは、実熱または湿熱が下焦（膀胱・大腸・小腸・肝腎領域）に結滞し、気血や水液の運行・排泄が障害された病証を指します。
熱邪が下焦に停滞すると、排尿・排便・生殖機能に異常をきたし、疼痛や閉塞、炎症症状が顕著になります。

主な原因

• 外感熱邪の裏入： 温熱邪が体内深部へ侵入し、下焦に停滞する。
• 湿熱下注： 飲食不節や脾失運化により湿が熱化し下焦に集まる。
• 情志失調： 肝鬱化火により下焦に熱が及ぶ。
• 久病・虚実夾雑： 正気不足のまま邪熱が留まりやすくなる。

病理機転

• 熱邪が下焦に結滞し、膀胱・腸腑・経絡の通利が失調する。
• 熱が水液を煎熬し、尿少・尿閉・便秘を生じる。
• 湿を伴う場合、熱と湿が互結して症状が遷延する。

主な症状

• 尿少・排尿困難・尿閉
• 尿黄・混濁・灼熱感
• 下腹部の張痛・拒按
• 便秘または臭気の強い便
• 発熱・煩躁・口渇
• 女性では帯下黄濁、男性では陰部不快感

舌・脈の所見

• 舌： 紅、苔黄厚または黄膩
• 脈： 滑数・実、または弦数

関連する病証

• 湿熱下注
• 膀胱湿熱
• 熱結腸腑
• 癃閉

治法

• 清熱瀉火： 下焦に結した実熱を除く。
• 利湿通淋： 湿熱を排し、尿路を通す。
• 通腑泄下： 腸腑の通降を回復させる。
• 清利下焦： 下焦の熱滞を解消する。

養生の考え方

• 辛辣・油膩・酒類を控える。
• 十分な水分補給で熱と濁を排出する。
• 排尿・排便を我慢しない。
• 過度な精神的ストレスを避ける。

まとめ

熱結下焦は、実熱または湿熱が下焦に結滞した裏実証です。
排尿・排便障害や下腹部症状が中心となり、治療は清熱利湿・通腑泄下を基本とします。
虚寒性の下焦障害との鑑別が極めて重要です。