肝鬱血熱とは

肝鬱血熱(かんうつけつねつ)とは、肝気鬱結が長期化して化火・化熱し、さらに血分にまで熱が及んだ状態を指す中医学の病証です。
情志の抑圧や怒りの蓄積により肝の疏泄機能が失調すると、気滞が生じ、やがて熱化して血を煎熬し、血熱・瘀血を伴う複雑な病態へと進展します。


主な原因

  • 情志鬱結 怒り・抑うつ・緊張の持続により肝気が鬱結し、熱化する。
  • 久鬱化火: 気滞が長引くことで肝火・肝熱へ転化する。
  • 肝血失調: 肝熱が血分に入り、血熱・瘀血を生じる。
  • 飲酒・辛熱飲食: 肝に熱を助長し、血熱を悪化させる。

病理機転

  • 肝気鬱結 → 気滞 → 化熱・化火。
  • 肝熱が血を煎熬し、血熱・血行障害を招く。
  • 熱と瘀が互いに結びつき、病態が複雑化する。
  • 肝の疏泄失調により全身の気血運行が乱れる。

主な症状

  • 胸脇の張痛・灼熱感
  • 易怒・焦燥感・情緒不安定
  • 顔面紅潮、目の充血
  • 口苦・口乾、便秘
  • 月経異常(量多・色濃・血塊)や不正出血

舌・脈の所見

  • 舌: 紅~暗紅、瘀点・瘀斑、黄苔
  • 脈: 弦数、あるいは渋数

関連する病証


代表的な方剤

  • 丹梔逍遙散: 肝鬱化熱・血熱を伴う場合に。
  • 竜胆瀉肝湯 肝胆実熱が顕著な場合。
  • 血府逐瘀湯: 瘀血と熱が結びつく場合。
  • 加味逍遙散 肝鬱血熱による情志症状に。

治法

  • 疏肝解鬱 肝気を伸ばし、鬱結を解く。
  • 清肝涼血: 肝熱・血熱を清する。
  • 活血化瘀 瘀血を去り、血行を改善する。

養生の考え方

  • 怒りや抑圧を溜め込まず、情緒を発散する。
  • 辛熱・油膩・飲酒を控える。
  • 十分な睡眠と休養で肝血を養う。
  • 軽い運動や呼吸法で肝気の疏泄を助ける。

まとめ

肝鬱血熱は、情志鬱結を背景に肝気が熱化し、血分にまで及んだ実熱性の病証です。
治療の基本は疏肝解鬱・清肝涼血・活血化瘀であり、精神的負荷の調整と飲食節制が極めて重要となります。

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