補益肝脾腎とは

概要

補益肝脾腎(ほえき かんぴじん)は、肝血不足・脾気虚・腎精不足が同時に存在し、気血精の生化が衰えて全身の虚弱症状を呈する場合に、肝を養血し、脾を健運し、腎を補益する治法である。婦人科疾患(不妊症・月経不調・更年期障害)、小児や高齢者の発育不良・老化性疾患、慢性消耗性疾患に広く応用される。



主な適応症状

  • 倦怠感、食欲不振、顔色萎黄
  • 眩暈、視力減退、耳鳴、健忘
  • 腰膝酸軟、足腰のだるさ
  • 月経不調、不妊症、経血量少
  • 性機能低下、遺精
  • 小児の発育不良、高齢者の体力減退
  • 舌淡紅~淡、苔薄、脈細弱



主な病機

  • 脾気虚弱 → 運化失調 → 気血生化不足
  • 肝血不足 → 肝失所養 → 眩暈・視力減退・月経不調
  • 腎精不足 → 精血同源 → 発育不良・不妊・老化促進
  • 肝脾腎三臓虚損 → 精血気虚 → 全身虚弱・慢性疾患



主な配合法

  • 補益肝脾腎+健脾益気:脾虚が顕著で消化不良・腹脹が強い場合
  • 補益肝脾腎+養血調経:婦人科疾患や月経不調を伴う場合
  • 補益肝脾腎+滋補肝腎:眩暈・耳鳴・腰膝酸軟が強い場合
  • 補益肝脾腎+安神:心悸・不眠・健忘が著しい場合



代表的な方剤

  • 帰脾湯合六味地黄丸:心脾両虚+腎陰不足による不眠・健忘・月経不調。
  • 十全大補湯:気血両虚・術後・慢性消耗性疾患。
  • 参帰養栄湯:気血両虚・倦怠・食欲不振・慢性疾患。
  • 杞菊地黄丸合当帰補血湯:肝腎不足による視力減退・月経不調。



臨床でのポイント

  • 基本は「気血精の不足」を同時に補うこと。人参・黄耆で益気、当帰・熟地で養血、枸杞子・杜仲で補腎を組み合わせる。
  • 婦人科領域(不妊・月経不調・更年期障害)、小児発育不良、高齢者の虚弱に応用する。
  • 肝血不足が目立つ場合は養血薬を、腎虚が目立つ場合は補腎薬を、脾虚が強い場合は健脾薬を重点的に加える。
  • 久病や慢性疾患に伴う全身虚弱の基盤治療として有用。



まとめ

補益肝脾腎は、肝血不足・脾気虚・腎精不足によって生じる全身の虚弱状態や婦人科・老年病・小児の発育不良に有効な治法である。帰脾湯・六味地黄丸・十全大補湯などを組み合わせて用いることで、気血精を同時に補い、長期の体力低下や慢性疾患に対処する。

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