肝脾腎三臓虚損とは

肝脾腎三臓虚損(かんひじんさんぞうきょそん) とは、肝・脾・腎の三臓の機能がいずれも虚して損なわれた状態を指します。
肝は血を蔵し疏泄を主り、脾は運化を主り、腎は精を蔵し命門の火を宿す臓です。これら三臓は互いに影響し合う関係にあり、いずれかが虚すれば他の臓にも及び、やがて三者ともに虚損することがあります。
その結果、気血の生化が乏しく、精血の不足・気虚・陽虚・陰虚が錯綜して、全身の慢性的な衰えや多彩な症状を呈するのが特徴です。


原因

  • 久病傷正: 長期にわたる慢性疾患や虚労によって、肝・脾・腎の精気が消耗する。
  • 加齢による衰え: 腎精が減少し、肝血・脾気の化源も乏しくなる。
  • 過労・思慮過度: 脾気を損ない、気血生化が乏しくなる。
  • 情志失調 肝気の鬱滞が脾胃を傷り、さらに腎精の化生を妨げる。
  • 房事過多 腎精が損耗し、肝血・脾気の源が枯渇する。

主な症状

  • 倦怠感・四肢無力・食欲不振
  • 顔色萎黄・唇色淡白・めまい
  • 目のかすみ・視力低下・爪の脆弱
  • 腰膝酸軟・耳鳴り・健忘・性機能低下
  • 月経量少・経遅または閉経、不妊
  • 下痢傾向または軟便・腹満
  • 冷え・寒がり・尿量増加または夜間多尿

舌・脈の所見

  • 舌: 淡または淡紅、苔薄白
  • 脈: 細・弱または沈細

病理機転

  • 腎精不足により肝血の化源が枯渇し、肝の疏泄・血蔵機能が低下する。
  • 脾気虚により気血の生化が乏しく、肝腎の滋養が不足する。
  • 肝血虚により脾の運化を助けられず、腎精の充養も減退する。
  • 三臓の虚が互いに影響し、気血精の不足と寒熱虚実の錯雑を呈する。

代表的な方剤

  • 八珍湯(はっちんとう): 気血両虚を補い、肝脾の機能を整える基本方。
  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう): 気血両虚が著しく、体力低下の著明な場合に。
  • 六味地黄丸(ろくみじおうがん): 腎陰虚を補い、肝腎の滋養を助ける。
  • 帰脾湯(きひとう): 脾気虚・心血虚による倦怠・健忘・不眠に。
  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん): 肝腎陰虚による目のかすみや視力低下に。
  • 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん): 脾虚・湿滞を伴う場合に運化を助ける。

治法

  • 補益肝脾腎 三臓の虚を総合的に補い、気血精を充実させる。
  • 健脾益気 気血の生化源を立て直す。
  • 養肝補血: 血を充実させ、肝の疏泄機能を回復する。
  • 補腎填精 腎精を養い、肝血・脾気の化源を支える。

養生の考え方

  • 過労・夜更かしを避け、十分な休養をとる。
  • 温かく消化の良い食事をとり、脾胃を保養する。
  • 肝の疏泄を助けるよう、気分を穏やかに保つ。
  • 冷えを避け、腰・下肢を温めて腎を守る。
  • 無理な性行為を控え、腎精を蓄える。
  • 軽い運動・気功・太極拳などで気血をめぐらせる。

まとめ

肝脾腎三臓虚損は、肝・脾・腎がいずれも虚して精血気の化源が衰えた状態であり、慢性消耗性疾患・加齢・過労などでみられます。
治療の基本は「補益肝脾腎」であり、三臓を総合的に滋養して生命活動の基盤を整えることが要点です。

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