鬱結とは

鬱結（うっけつ） とは、気・血・津液などの体内の巡りが滞り、通じなくなった状態を指します。
「鬱」は滞って伸びない、「結」は固まって通じないことを意味し、感情の抑圧・気機の停滞・痰湿・瘀血などによって生じます。
長期に及ぶと、気鬱・血瘀・痰結・食滞など、さまざまな形で内に閉塞し、痛み・腫れ・しこり・精神的な抑うつを引き起こします。

原因

• 情志の失調： 怒り・憂い・思慮などの感情の抑圧により、気機が滞る。
• 気滞血瘀： 気の流れが悪くなると、血も流れず、瘀血を形成する。
• 痰湿内停： 飲食の不摂生や脾虚によって痰湿が生じ、気の流れを妨げる。
• 外邪侵襲： 寒邪や湿邪などが経絡に停滞し、気血の運行を阻む。
• 久病入絡： 慢性病による気血の阻滞が鬱結を形成する。

主な症状

• 胸や脇の張り・痛み
• 咽喉や胸に「つかえ」を感じる
• 腹部膨満・便秘
• 月経不順・月経痛・経血塊
• 抑うつ感・いらいら・ため息
• しこり・腫れ・痛み（乳房や肋間部など）

舌・脈の所見

• 舌： 暗紅または紅、苔薄または薄黄、瘀斑を伴うことも
• 脈： 弦または弦渋

主な病機分類

• 気鬱： 主に情志の抑うつによる気の滞り。胸脇満・ため息・抑うつ感。
• 血結（血瘀）： 血行が悪くなり、刺すような固定痛や経血塊を伴う。
• 痰結： 痰湿が停滞して、しこり・結節・咽中異物感を生じる。
• 熱結： 鬱滞が化熱し、煩躁・口苦・便秘などを伴う。

代表的な方剤

• 逍遥散（しょうようさん）： 肝気鬱結による情緒不安・月経不調に。
• 柴胡疏肝散（さいこそかんさん）： 肝気鬱滞による胸脇痛・気分の張りに。
• 丹梔逍遥散（たんししょうようさん）： 肝鬱化火によるいらいら・顔のほてりに。
• 血府逐瘀湯（けっぷちくおとう）： 気滞血瘀による胸痛・頭痛・顔色暗滞に。
• 半夏厚朴湯（はんげこうぼくとう）： 痰気鬱結による咽喉異物感・胸部圧迫感に。
• 越鞠丸（えっきつがん）： 気・血・痰・火・食の五鬱を調える総合的方剤。

養生の考え方

• 心の緊張を解き、感情を抑え込みすぎない
• 軽い運動や散歩で気の流れを促す
• 過食や脂っこい食事を避け、脾胃を守る
• 音楽・読書・自然の中でリラックスする時間をもつ
• 規則正しい生活リズムと十分な睡眠をとる

まとめ

鬱結とは、気・血・痰・湿などが体内に滞って通じなくなった状態であり、痛み・しこり・抑うつなど多様な症状を呈します。
治法の基本は「疏肝理気」「化瘀散結」「行気解鬱」であり、気血の流れを整え、心身の伸びやかさを取り戻すことが大切です。