葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
出典『備急千金要方』
分類祛風湿剤温経散寒剤
保険適用エキス製剤葛根加朮附湯(ツムラ44、クラシエ44など)
構成生薬葛根・麻黄・桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・朮・附子


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能発汗解表温経散寒祛風除湿止痛
主治風寒湿邪が経絡に侵入し、項背・四肢・関節のこわばりや疼痛を起こす。
悪寒・無汗・身体痛などを伴う。
病機外感風寒と内在の湿が結び、経脈の気血運行を阻害して疼痛を生じる。
現代的適応関節リウマチ、頚肩腕症候群、五十肩、腰痛症、神経痛、寒湿性関節炎など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)寒湿の影響で関節や筋肉がこわばり、痛みが増悪する。
悪寒があり、汗が出にくい。
冷えにより症状が悪化し、温めると軽減する。
体質傾向体力中等度〜やや虚証。冷え性で湿気に弱い体質。
舌診淡紅または淡白、白苔または湿潤苔。
脈診浮・緩または沈・弱。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
葛根(かっこん)解肌発表、舒筋活絡。項背のこわばりを緩める。
麻黄(まおう)発汗解表、祛風散寒。寒邪を外に追い出す。
桂枝(けいし)温経通陽、調和営衛。寒による痛みを除く。
芍薬(しゃくやく)養血柔筋、緩急止痛。筋肉のこわばりや痙攣を和らげる。
朮(じゅつ)燥湿健脾、祛風除湿。湿気による関節痛を改善。
附子(ぶし)温陽散寒、止痛。体を温め、冷えによる痛みを緩和。
生姜・大棗・甘草調和営衛・健脾和中。薬性を和らげ全体のバランスを整える。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症・鎮痛作用(関節痛・神経痛の軽減)
  • 血行促進作用(冷えやしびれの改善)
  • 筋肉弛緩作用(肩こり・頸部緊張の緩和)
  • 自律神経調整作用(冷え性体質の改善)
  • 免疫調整作用(慢性関節炎の補助療法)


⚠️ 使用上の注意

  • 発汗過多・体力虚弱の人では慎重に使用。
  • 附子を含むため、過量服用に注意(しびれ・動悸・口唇の違和感など)。
  • 熱感・炎症が強い関節痛(熱痺)には不向き。
  • 高齢者・心疾患・高血圧の患者では麻黄の作用に注意。


💬 臨床応用例

  • 頚肩腕症候群、肩こり、五十肩
  • 慢性関節リウマチ、変形性関節症
  • 坐骨神経痛、腰痛症
  • 冷えにより増悪する神経痛・筋肉痛
  • 感冒後の関節痛・悪寒


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
葛根湯風寒表証の初期感冒に用い、発熱・項背強直が主。関節痛・冷えは軽い。
麻黄附子細辛湯体力虚弱で寒が強く、発汗少なく四肢冷える場合に適す。
真武湯冷え・むくみ・下痢など、内寒と水滞が主で関節痛は軽度。
桂枝加朮附湯風湿による慢性関節痛が中心で、発表作用は穏やか。


📖 メモ

  • 「葛根湯」に「朮」と「附子」を加え、湿と寒を強力に除くようにした方剤。
  • 寒湿が関節や筋肉に滞り、動かすと痛む「痺証(しひしょう)」に用いられる。
  • 特に「寒さで痛みが強くなる」「温めると楽になる」タイプの関節痛に適する。
  • 肩こりや腰痛において、冷えと湿気が関係する場合の第一選択となる。

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