概念
宣通（せんつう）とは、気血や経絡の滞りを開き、全身の運行を円滑にする治法である。
「宣」は発散・開通を意味し、「通」は流れを通じる意。すなわち、気機を宣達させ、経絡・臓腑・気血の運行を滞りなくすることを目的とする。
主に気滞・痰湿・瘀血・寒凝などによって経気が閉塞し、胸悶・脹痛・痺痛・不通などを呈する際に用いる。
所属
宣通法は主に行気法・活血法・通絡法などに属し、
特に気滞血瘀・痰阻経絡・寒湿閉塞などの病態で、気血の流通を促すために用いられる。
効能
- 気血の流通を促し、経絡の通りを良くする。
- 気滞・血瘀・痰湿による閉塞感や痛みを除く。
- 臓腑の気機を調え、機能失調を改善する。
- 頭・胸・腹などの鬱滞を解消し、気の巡りを回復する。
- 寒湿や痰濁による痺痛・不通を改善する。
主治
病機
体内の気血津液の運行が円滑であれば、経絡は通じ、臓腑は調和する。
しかし、外邪侵襲・情志内傷・飲食不節・久病虚弱などによって気機が阻滞すると、
経絡・臓腑・竅が閉塞し、不通・疼痛・鬱悶・腫脹などの症状が出現する。
宣通法は、宣達・通利を主とし、行気・活血・祛痰・祛風湿などを組み合わせて、気血経絡の流通を回復させる。
代表方剤
- 柴胡疏肝散（さいこそかんさん）：肝気鬱結による脇痛・胸悶・抑うつ。
- 血府逐瘀湯（けっぷちくおとう）：胸中瘀血による胸痛・刺痛。
- 二陳湯（にちんとう）：痰湿阻滞による胸痞・咳嗽・頭重。
- 独活寄生湯（どっかつきせいとう）：風寒湿痺による関節痛・運動不利。
- 蘇合香丸（そこうこうがん）：痰厥・閉証による昏迷・意識障害。
臨床応用
- 胸悶・脇痛・気鬱などの気滞性症状。
- 頭痛・肩こり・関節痛などの瘀血・痰湿性不通。
- 慢性疲労・抑うつ・食欲不振を伴う気機失調。
- 慢性呼吸器疾患での痰湿鬱閉型。
- 中風・痺症など経絡不通に伴う麻木・拘攣。
使用上の注意
- 虚証・脱証には不適であり、補益薬と併用する必要がある。
- 熱盛による閉塞では清熱通絡薬を加える。
- 寒湿が主因の際は温通薬を併用する。
- 体力低下例では行気・活血薬の過用に注意する。
まとめ
宣通法は、気血経絡の滞りを開き、全身の流通を促す治法である。
主に気滞・血瘀・痰湿・寒凝による閉塞・疼痛・鬱滞などに用いられ、
代表方剤は柴胡疏肝散・血府逐瘀湯・二陳湯など。
治療の要点は、宣達・通利・行気・活血・化湿にある。
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