内生邪とは、外界から侵入する外邪とは異なり、体内の臓腑機能失調や気血津液の失衡によって内側から生じる病邪を指します。
七情の失調、飲食不節、労倦、久病などにより、正気が損なわれることで、風・寒・湿・燥・火(熱)・痰・瘀血などが体内で生成されます。
主な原因
- 情志失調: 怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の偏りにより、気機が乱れ内風・内火を生じる。
- 飲食不節: 過食・偏食・油膩甘味により、痰湿・内熱が生じる。
- 労倦・過労: 正気を損ない、陰陽失調から虚熱・内寒が発生。
- 久病体虚: 病が長引くことで、痰・瘀血などの病理産物が内生。
病理機転
- 正気虚弱 → 気血津液の運行失調。
- 運化・昇降・出入の失調 → 痰湿・瘀血が停滞。
- 停滞が久しくなる → 鬱して化熱、または内風を生じる。
- 内生邪が臓腑・経絡・清竅を阻害 → 多彩な慢性症状を形成。
主な症状
- 慢性的・反復性の症状
- 体調の波が情緒や飲食に左右されやすい
- 明確な外感契機がない発症
- 痰・湿・瘀血に伴う重だるさ、固定痛、しびれ
- 虚実錯雑の症状を呈しやすい
代表的な内生邪の種類
- 内風: 肝陽上亢、肝血不足などによる眩暈・震え。
- 内寒: 陽虚による冷え、泄瀉。
- 内湿: 脾虚による重だるさ、浮腫。
- 内燥: 津液不足による乾燥。
- 内火・内熱: 陰虚や鬱火による煩熱。
- 痰・瘀血: 気血津液失調の病理産物。
舌・脈の所見
- 舌: 証により淡・紅・暗、苔膩・少苔など多様
- 脈: 弦・滑・細・虚・数など、虚実錯雑を示すことが多い
治法
養生の考え方
- 感情の偏りを避け、気機の鬱滞を防ぐ。
- 飲食を節し、脾胃を損なわない。
- 十分な休養で正気を養う。
- 慢性症状は短期改善を求めず、体質調整を重視する。
まとめ
内生邪は、体内の失調から生じる慢性・複雑な病邪であり、虚実錯雑・寒熱混在を呈しやすいのが特徴です。
治療は祛邪のみでなく、扶正を重視し、臓腑機能を整えることで内生邪の再発を防ぐことが重要となります。
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