補腎健脾とは

概要

補腎健脾(ほじん けんぴ)は、腎虚と脾虚が同時に存在し、気血不足や水穀の運化失常を伴う病態に用いる治法である。腎は先天の本、脾は後天の本であり、両者がともに虚すると、発育不良・体力低下・消化吸収障害・水湿停滞などが現れる。小児や慢性病患者、高齢者などの虚弱体質によく応用される。



主な適応症状

  • 発育不良、体格虚弱
  • 食欲不振、下痢、泥状便
  • 倦怠感、疲労しやすい
  • 浮腫、顔色萎黄
  • 腰膝酸軟、冷え
  • 夜尿、遺尿
  • 不妊、月経不調
  • 舌淡、苔白、脈細弱


主な病機

  • 腎精不足 → 成長・発育不良、腰膝軟弱
  • 脾気虚 → 運化失職 → 食欲不振・下痢
  • 腎陽虚+脾陽虚 → 水湿停滞 → 浮腫・下痢
  • 腎虚+脾虚 → 気血生化不足 → 倦怠・顔色不華


主な配合法

  • 補腎健脾+益気養血:発育不良・貧血傾向がある場合
  • 補腎健脾+温陽利水:浮腫や尿量異常を伴う場合
  • 補腎健脾+健脾和胃:食欲不振・腹部膨満が著しい場合
  • 補腎健脾+安神:虚弱に伴う不眠・不安を伴う場合



代表的な方剤

  • 六味地黄丸合参苓白朮散:腎精不足と脾気虚を兼ねる場合。
  • 参苓白朮散合右帰丸:脾虚による下痢と腎陽虚による冷えを同時に治す場合。
  • 加味帰脾湯:脾腎両虚に精神疲労や健忘が著しい場合。
  • 七味都気丸:小児の発育不良や老人の虚弱体質。



臨床でのポイント

  • 腎精不足による発育不良や生殖機能低下と、脾虚による消化吸収不良が同時にある場合に適応する。
  • 薬物としては、人参・白朮・茯苓・山薬などの健脾薬と、熟地黄・山茱萸・杜仲・巴戟天などの補腎薬を組み合わせる。
  • 小児の体質虚弱や高齢者の脾腎両虚に広く応用できる。
  • 脾虚による湿盛が強いときは、利湿薬を加えて調整する。
  • 腎陽虚を兼ねる場合は附子・肉桂など温陽薬を適宜加える。



まとめ

補腎健脾は、腎虚と脾虚が同時に存在する病態に対して、腎精を補い、脾気を健やかにすることで、成長発育・消化吸収・体力を改善する治法である。小児や高齢者の虚弱体質、慢性疾患の後期に有効であり、腎と脾の両面を調整することが臨床上の要点となる。

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