概要
理気和胃（りき わい）は、胃気の昇降失調・気滞不和によって生じる 胃脘脹満・噯気・嘔吐・悪心などの症状を改善する治法である。 主として肝気犯胃・飲食停滞・痰湿中阻・情志不暢などによる胃の気機不利に用いられる。
主な適応症状
- 胃脘脹満・痞塞感・痛み
- 噯気（げっぷ）・嘔吐・悪心
- 食欲不振・胸悶・嗳腐吞酸
- 口苦・口乾・便溏または便秘
- 舌苔白膩または黄膩、脈弦・滑など
主な病機
- 肝気犯胃 → 胃失和降 → 嘔吐・脹満・噯気
- 飲食停滞 → 中焦気滞 → 胸脘痞塞・食欲不振
- 痰湿中阻 → 胃気不降 → 悪心・嘔吐・痞悶
- 情志不暢 → 気機不調 → 食後脹満・胃痛
主な配合法
- 理気和胃＋化痰止嘔：痰湿中阻による嘔吐・痰多（例：二陳湯合平胃散）。
- 理気和胃＋疏肝理気：肝胃不和による脹痛・噯気（例：柴胡疏肝散、逍遙散合左金丸）。
- 理気和胃＋消食導滞：食積による胃満・食欲不振（例：保和丸）。
- 理気和胃＋和中止痛：脾胃不和・胃痛（例：香砂六君子湯、安中散）。
- 理気和胃＋降逆止嘔：胃気上逆・嘔吐（例：半夏瀉心湯、旋覆代赭湯）。
代表的な方剤
- 柴胡疏肝散（さいこそかんさん）：肝気犯胃による脹痛・噯気・胸脇満。
- 左金丸（さきんがん）：肝火犯胃による胸脇灼熱・吞酸・嘔吐。
- 香砂六君子湯（こうしゃりっくんしとう）：脾胃気虚・気滞による嘔吐・腹満。
- 平胃散（へいいさん）：湿滞中焦による脘腹脹満・食欲不振。
- 保和丸（ほわがん）：食滞による胃脘痞満・噯気・悪心。
- 半夏瀉心湯（はんげしゃしんとう）：胃気不和による嘔吐・胸痞・痞満。
臨床でのポイント
- 理気和胃は、胃気を調え、昇降のバランスを回復させることが中心。
- 気滞が強い場合は疏肝理気薬を、湿濁が重い場合は燥湿化痰薬を併用する。
- 嘔吐が強い場合は降逆止嘔薬（半夏・生姜など）を組み合わせる。
- 虚証を伴う場合は健脾益気・養胃生津を兼ねて用いる。
まとめ
理気和胃は、胃気の昇降失調・気滞による脹満・嘔吐・食欲不振などに対する治法である。 肝気・痰湿・食滞・情志など、気機を阻む原因を除き、胃の調和と気の順行を取り戻す。 柴胡疏肝散・香砂六君子湯・半夏瀉心湯などが代表的な処方である。
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