強骨とは

概要

強骨(きょうこつ)とは、腎を補い骨を強くする治法であり、主として腎虚による骨の弱化・発育不良・腰膝軟弱などに用いられる。 中医学では「腎は骨を主る」とされ、腎精は骨髄を生じて骨格の発育や維持を支える。 したがって、腎精が不足すると骨がもろくなり、成長障害や腰膝のだるさ・歯の動揺・骨痛などを呈する。 「強骨」法は、補腎・益精・養血を通じて骨を滋養し、強健にすることを目的とする。

本治法は、発育不良・骨軟化・骨粗鬆症・腰膝酸軟・久病体虚などに応用される。 特に小児の発育遅延や老人の骨虚弱、慢性疾患による筋骨萎縮などに適している。



主な適応症状

  • 腰膝酸軟・筋骨無力
  • 歯の動揺・脱落
  • 骨痛・関節疼痛(虚性)
  • 小児の発育遅延・歩行遅延
  • 骨折の治癒遅延・骨粗鬆症
  • 舌淡または紅・脈沈細無力

これらは主に腎精不足肝血虚気血両虚などにより骨髄の充養が不足した結果生じる。



主な病機

  • 腎精不足先天の虚弱・加齢・久病により腎精が衰え、骨を養う力が減退。
  • 肝腎両虚肝血と腎精がともに不足し、筋骨の栄養が失調。
  • 気血不足脾虚・消耗により骨髄への血供が減少。
  • 骨髄虚損:慢性病や労倦による精血耗損で骨質が脆弱化。

治療の要点は、補腎益精を中心に、肝血を養い、気血を充実させて骨を強めることである。



主な配合法

  • 強骨+補腎腎虚による腰膝軟弱(例:六味地黄丸左帰丸)。
  • 強骨+養血肝血不足による筋骨萎軟(例:四物湯配合)。
  • 強骨+益気久病体虚・骨折遅延(例:八珍湯配合)。
  • 強骨+活血血行不良を伴う骨痛・外傷後(例:補陽還五湯)。
  • 強骨+填精性機能低下・骨髄虚(例:右帰丸龜鹿二仙膠)。


代表的な方剤

  • 六味地黄丸(ろくみじおうがん):補腎滋陰。腎陰虚による腰膝軟弱・耳鳴・盗汗に。
  • 左帰丸(さきがん):益精補腎・強筋健骨。精血不足の虚弱に。
  • 右帰丸(うきがん):温補腎陽・強筋壮骨。陽虚による冷え・骨虚に。
  • 龜鹿二仙膠(きろくにせんこう):補精益髄・強筋健骨。腎精虚・骨萎軟・疲労に。
  • 虎潜丸(こせんがん):滋陰補腎・強筋壮骨。肝腎陰虚の筋骨痿軟に。
  • 健歩丸(けんぽがん):補腎壮骨・強筋活血。老人の足腰虚弱に用いる。


臨床でのポイント

  • 「骨は腎に属す」ため、補腎強骨が治療の核心となる。
  • 肝血は筋を養うため、肝腎両補を兼ねると効果的。
  • 骨折・骨粗鬆症では、補腎益精と活血化瘀を併用する。
  • 老年性虚弱では、陽虚・陰虚の弁証を見極めて方剤を選ぶ。
  • 小児の発育遅延では、腎精を補い骨の発育を促す。


まとめ

強骨法は、腎を補い、精を充実させて骨を強健にする治法である。 腎虚精血不足肝腎両虚による腰膝軟弱・骨脆弱・発育不良などに用いられる。 代表方剤には六味地黄丸・左帰丸・龜鹿二仙膠・虎潜丸などがあり、 補腎・益精・養血・活血を組み合わせて骨の滋養を図る。

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