五積散(ごしゃくさん)

📘 基本情報

項目内容
方剤名五積散(ごしゃくさん)
出典『太平恵民和剤局方』
分類理気行滞温経散寒活血化瘀化痰除湿剤
保険適用エキス製剤五積散(ツムラ60、クラシエ60など)
構成生薬 蒼朮・陳皮・厚朴・茯苓・枳実・白芷・麻黄・当帰・芍薬・川芎・桂枝・乾姜・甘草・桔梗


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能温経散寒行気活血健脾除湿化痰止痛
主治 冷えやストレス、湿気による気滞・血瘀・痰湿・食積の停滞により生じる諸症。
月経痛、頭痛、肩こり、腰痛、冷え、悪寒、関節痛、胃腸障害など。
病機 外感の寒湿・内生の痰飲・気血の滞り・飲食の停滞が複合して、「気・血・水」の運行が阻滞し、疼痛・悪寒・冷え・倦怠が生じる。
麻黄・桂枝で表を解し、蒼朮・厚朴・陳皮で脾気を整え、当帰・川芎・芍薬で血を調え、乾姜・茯苓・白芷で寒湿を除き、枳実・桔梗で気滞を散じ、甘草で諸薬を調和する。


🌡 臨床的特徴

観点内容
典型的症状 ・冷えを伴う腹痛、月経痛、腰痛、頭痛、関節痛
・顔色不良、倦怠感、食欲不振
・寒さ・湿気で症状が悪化する
・時に悪寒・発熱を伴う(感冒・神経痛など)
体質傾向 冷え性・瘀血体質・気滞傾向・湿痰体質。
舌診淡暗紅、白苔または薄黄苔。
脈診弦・緊・濇など。


💊 構成生薬と主な作用

生薬名主要作用
麻黄・桂枝発汗解表・温経散寒し、寒邪を除く。
蒼朮・厚朴・陳皮・茯苓・枳実健脾除湿、理気化痰し、停滞を除く。
当帰・川芎・芍薬活血化瘀、調経止痛。
乾姜・白芷温中散寒、通陽止痛。
桔梗宣肺利気、上焦の気滞を解消。
甘草調和諸薬、緩急止痛。


🩺 現代医学的な理解

  • 自律神経の調整作用(ストレス関連症状の改善)
  • 血流改善作用(冷え・月経痛・肩こりの緩和)
  • 抗炎症・鎮痛作用(神経痛、筋肉痛、関節痛)
  • 消化促進作用(胃腸虚弱・腹部膨満)


💬 臨床応用例

  • 月経痛・月経不順・更年期障害。
  • 冷えを伴う頭痛・肩こり・腰痛・神経痛。
  • 寒湿による関節痛・坐骨神経痛。
  • 慢性胃炎・胃腸虚弱・冷えによる腹部膨満。
  • 寒冷時の感冒・全身倦怠・むくみなど。


⚖️ 類方鑑別

方剤名鑑別点
当帰芍薬散冷えと貧血傾向が中心で、疼痛よりもむくみや倦怠を主とする。
桂枝茯苓丸血瘀主体で実証寄り。冷えよりも熱感・のぼせ・血行不良が強い。
香蘇散気滞中心で寒湿・瘀血が軽い場合に用いる。
真武湯冷えと水滞主体で、めまい・下痢・浮腫を主とする。


⚠️ 使用上の注意

  • 実熱・のぼせ・便秘傾向には不適。
  • 体力が極度に低下している場合は慎重に使用。
  • 温性薬が多いため、発熱や口渇が強いときは避ける。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 「気・血・痰・湿・食」の五積を一挙に解消する総合的方剤。
  • 冷えや停滞が多方面に関わる慢性疾患に有効。
  • 特に女性の「冷え+月経痛+頭痛+肩こり」に定評あり。
  • 五積散は「虚中の実証」に用いる代表方である。

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