概要
除瘀通経（じょおつうけい）とは、瘀血（おけつ）を取り除き、経脈を通じさせて月経を正常化する治法である。 主に、血行の停滞によって経脈が阻滞し、月経不順・経痛・経閉などを引き起こす病態に対して用いられる。 この治法は婦人科領域で特に重要であり、瘀血を去ることにより、月経の流通を円滑にし、疼痛を軽減することを目的とする。
「除瘀」はすなわち「活血化瘀」に相当し、「通経」は経脈を通暢にすることを意味する。 したがって、血滞を去り、経脈の流れを回復して月経を通じることが治療の中心となる。
主な適応症状
- 月経遅延・経閉・月経量少・暗紫色の血塊を伴う
- 月経痛（刺すような痛み、拒按）
- 下腹部の固定痛・しこり感
- 顔色暗滞・唇暗紫・舌質暗・瘀点
- 脈弦または澀（しゅう）
これらの症状は、瘀血が胞宮（子宮）や経脈に停滞して気血の運行を阻むために生じる。 月経血が順調に排出されず、経行痛や経閉などの形で現れる。
主な病機
- 寒凝血瘀：寒邪が経脈を収縮させ、血行を阻滞し月経痛・経閉を起こす。
- 気滞血瘀：情志抑鬱などにより気機が鬱し、血の流れが停滞する。
- 血虚血瘀：血虚により新血が生じず、旧血が停滞して経が通じない。
- 外傷・産後瘀血：出産後の悪露不尽などにより瘀血が残留し、疼痛や経行異常を生じる。
したがって、除瘀通経法では、血行を促進し、瘀を除いて経脈を通すことを中心に、必要に応じて 温経散寒・養血補虚・行気などの法を兼ねる。
主な配合法
- 除瘀通経＋温経散寒：寒凝血瘀による経閉・経痛（例：温経湯）。
- 除瘀通経＋行気解鬱：気滞血瘀による経遅・経痛（例：血府逐瘀湯、逍遙散）。
- 除瘀通経＋補血養血：血虚を伴う経少・経閉（例：四物湯＋桃紅など）。
- 除瘀通経＋活血止痛：月経痛・産後瘀血腹痛（例：生化湯）。
- 除瘀通経＋清熱凉血：熱入血室による経早・経痛（例：清経湯）。
代表的な方剤
- 温経湯（うんけいとう）：温経散寒・養血調経。寒による血滞・月経不調に。
- 桃核承気湯（とうかくじょうきとう）：破血下瘀。血瘀による月経閉止や下腹部痛に。
- 血府逐瘀湯（けっぷちくおとう）：活血祛瘀・行気止痛。気滞血瘀による胸脇痛・月経異常に。
- 生化湯（しょうかとう）：活血化瘀・温経止痛。産後の瘀血停滞や悪露不尽に。
- 桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）：活血化瘀・調経止痛。瘀血型月経不順・子宮筋腫などに用いる。
臨床でのポイント
- 月経異常のうち、血色が暗く血塊を伴う場合は瘀血が疑われる。
- 寒・気滞・血虚などの兼証に応じて温・行・補の法を組み合わせる。
- 産後や流産後の瘀血残留には特に有効。
- 慢性経痛や不妊の背景に瘀血がある場合にも応用される。
- 血行促進作用が強いため、妊娠中は慎用する。
まとめ
除瘀通経法は、瘀血を取り除き経脈を通暢にして月経を整える治法である。 主として月経遅延・経閉・経痛などの「血行不暢」に基づく婦人病に応用され、 代表方剤には温経湯・桂枝茯苓丸・血府逐瘀湯・生化湯などがある。 瘀血を去ることで経が通り、疼痛が止むことを目指す。
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