健脊調中とは

概念

健脊調中(けんせきちょうちゅう)とは、脊柱および中焦(脾胃)の機能を整え、身体の支持力と気血の運行を改善する治法である。
脾胃の虚弱や気血不足、または筋骨の失養によって、背腰の倦怠・姿勢の不安定・脊部の冷えや重だるさが現れる。
健脊調中法は、脾胃を健やかにし、気血を充実させて、脊柱と筋肉を滋養し、体幹の安定を回復することを目的とする。


所属

主に健脾法および補気養血法に属し、脾虚気血不足・筋骨失養・中気下陥などに基づく脊腰の虚弱や倦怠に用いる。


効能

  • 脾胃を健やかにし、中焦の運化を助ける。
  • 気血を充実させ、筋骨を滋養する。
  • 脊柱の支持力を高め、姿勢の安定を改善する。
  • 背腰の倦怠・だるさ・脱力を軽減する。
  • 気を昇提し、下陥症状を防ぐ。

主治

  • 脾虚疲労倦怠、背腰の脱力感、食欲不振。
  • 気血不足体力低下、姿勢維持困難、顔色萎黄。
  • 中気下陥立ちくらみ、脱力、内臓下垂傾向。
  • 筋骨失養:背腰のだるさ、筋肉の萎縮。
  • 虚弱体質:慢性的な疲労、背中の張り感。

病機

脾胃の虚弱や中気不足により、気血の生成が不十分となり、筋骨が滋養を失う。
また、脾虚による気機下陥があると、脊柱や腰背部の支持力が低下し、倦怠・姿勢不良が生じる。
健脊調中法は、健脾益気・養血強筋・調中和気を図り、脊柱と中焦の機能を回復する。


代表方剤

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):中気下陥、倦怠、背腰の疲労感。
  • 帰脾湯(きひとう):心脾両虚による疲労・無力感。
  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):気血両虚、体力減退、筋骨萎軟。
  • 黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう):脾虚・背腰冷痛・倦怠。
  • 六君子湯(りっくんしとう):脾胃虚弱による食欲低下・疲労。

臨床応用

  • 慢性腰背部倦怠、姿勢維持困難。
  • 脊柱筋の虚弱や筋力低下。
  • 加齢や慢性疾患後の体幹虚弱。
  • 脾胃虚弱による食後の疲労感。
  • 姿勢性腰痛・体幹バランス不良の補助療法。

使用上の注意

  • 実熱や湿熱を伴う場合は清熱・化湿薬を併用する。
  • 寒湿による腰背痛では温通薬を加える。
  • 虚証が著しい場合は長期補養を行う。
  • 脾胃虚弱が根本にある場合、過食や冷飲を避ける。

まとめ

健脊調中法は、脾胃を健やかにし、気血を充実させて、脊柱と筋肉を滋養する治法である。
代表方剤は補中益気湯十全大補湯帰脾湯などで、健脾益気養血・強筋が治療の要点となる。

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