【概要】
祛邪扶正とは、体内に侵入・停滞した邪気を取り除きつつ(祛邪)、同時に正気を補い扶助する(扶正)治法である。
単に邪を攻める、あるいは正気のみを補うのではなく、邪正の盛衰関係を調整し、全身の抗病力と回復力を高めることを目的とする。
中医学では、「正気存すれば邪不可侵」とされ、疾病の発生・進展は邪気の強弱と正気の虚実の相互関係によって決定される。
祛邪扶正法は、急性・慢性を問わず、多くの実証と虚証が錯雑する病態に応用される重要な治法である。
主な適応症状
- 慢性疾患が長引き、回復しきらない状態
- 感染後・炎症後の体力低下
- 再発を繰り返す疾患
- 虚実が錯雑する症状(疲労感+発熱・痛みなど)
- 治療反応が鈍く、改善が停滞している場合
主な病機
- 邪正交争:邪気が残存し、正気が消耗している状態。
- 正虚邪恋:正気不足のため邪が去らない。
- 邪去未尽:治療後も余邪が体内に残留。
- 虚中挟実:虚証を基盤に実邪が内在。
- 久病入絡:慢性経過で邪が深部に停滞。
主な配合法
代表的な方剤
- 扶正祛邪方:正気補益と邪気排除を同時に行う応用方。
- 補中益気湯 加減:正虚を補いながら余邪を処理。
- 十全大補湯 加味:気血両虚に邪が残る場合。
- 人参養栄湯 加減:慢性消耗性疾患の回復期。
- 清補並用方:清熱と補益を同時に行う構成。
臨床でのポイント
- 邪実が強すぎる場合は祛邪を優先。
- 正気が極端に虚する場合は扶正を先行。
- 攻補のバランス調整が最重要。
- 慢性疾患では段階的治療が基本。
- 補益過多による邪留に注意する。
まとめ
祛邪扶正は、邪気の排除と正気の充実を同時に図る、中医学における高度な治療戦略である。
虚実錯雑・慢性化・再発性疾患において特に重要で、単なる対症療法を超えた体質改善・再発防止・根本治療を可能にする。
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