柔肝熄風とは

【概要】
柔肝熄風とは、肝を柔らかく滋養してその亢進を鎮め、内風の動揺を平息させる治法である。
肝血・肝陰の不足、あるいは肝陽偏亢により生じる肝風内動を調整する目的で用いられる。

肝は「剛臓」に属し、疏泄が過度になると風を生じやすい
本法は肝を柔和に保つことで、筋脈・神志・運動機能の安定を図る。



主な適応症状

  • めまい・ふらつき
  • 手足の震え・痙攣
  • 筋肉のこわばり・引きつり
  • 頭痛・項部緊張
  • 情緒不安定・易怒


主な病機

  • 肝血虚筋脈が滋養されず、内風を生じる。
  • 肝陰虚陰が陽を制御できず、肝風内動。
  • 肝陽上亢陽亢により風が動く。
  • 虚実錯雑虚を本とし、風を標とする。
  • 情志失調肝疏泄過度による風動。


主な配合法

  • 柔肝熄風+養血肝血虚による震え。
  • 柔肝熄風+滋陰肝陰虚・虚熱。
  • 柔肝熄風+平肝潜陽肝陽上亢。
  • 柔肝熄風+舒筋筋緊張・痙攣。
  • 柔肝熄風+安神神志不安を伴う場合。


代表的な方剤

  • 芍薬甘草湯急性筋攣縮・疼痛。
  • 天麻鈎藤飲:肝陽上亢・内風。
  • 鎮肝熄風湯:肝風内動。
  • 一貫煎:肝陰虚・疏泄失調。
  • 四物湯加減:血虚を基礎とする肝風。


臨床でのポイント

  • 「柔肝」を主とし、強い鎮風薬に偏りすぎない。
  • 虚証を見誤らず、補法を基礎にする。
  • 筋・脈・神志の変化を総合的に観察する。
  • 慢性例では滋養を重視する。
  • 情志調整も治療効果に影響する。


まとめ

柔肝熄風は、肝を柔和に保つことで内風を鎮め、筋脈と神志の安定を図る治法である。
補虚を本とし、熄風を標とする視点が、本法を活かす鍵となる。

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