気機失調とは

気機失調(ききしっちょう)とは、全身または特定の臓腑において「気の昇降・出入」が円滑に行われず、気の運行バランスが乱れた状態を指す中医学の病証です。
気機は生命活動の原動力であり、臓腑・経絡・上下内外を貫いて働きます。その調節が失われると、さまざまな不調や病変が生じます。


主な原因

  • 情志失調 怒・憂・思・恐など七情の偏りにより、気の流れが阻害される。
  • 飲食不節 暴飲暴食や不規則な食生活が脾胃の気機を乱す。
  • 外邪の侵襲: 風・寒・湿・熱などが気機の通路を塞ぐ。
  • 久病虚労 正気の消耗により、気の推動・調節力が低下する。

病理機転

  • 気の昇降出入が失調し、停滞・逆行・不足が生じる。
  • 脾気不昇・胃気不降・肺気不宣・肝気鬱結など多様な病態を招く。
  • 気機の乱れは、湿・痰・瘀血の生成を促進する。
  • 全身症状として現れることも、局所症状として現れることもある。

主な症状

  • 胸腹部の張り・膨満感・つかえ感
  • 噯気・ため息が多い、胸苦しさ
  • 悪心・嘔吐、げっぷ、食欲不振
  • 情緒不安定、抑うつ感、焦燥感
  • 症状が部位や時間によって変動しやすい

舌・脈の所見

  • 舌: 淡紅、苔薄白またはやや膩
  • 脈: 弦、あるいは弦滑・弦緩

関連する病証

  • 気滞 気が停滞し、張痛・膨満を主とする。
  • 気逆 本来下降すべき気が上逆する。
  • 気虚 推動力不足により気機が円滑に動かない。
  • 昇降失調 臓腑の昇清降濁が乱れた状態。

代表的な方剤

  • 四逆散 気機失調による胸脇苦満・情志不安に。
  • 柴胡疏肝散: 肝気鬱結が中心の場合。
  • 半夏厚朴湯 気滞と痰を伴う咽中不快感に。
  • 香砂六君子湯: 脾虚を伴う気機失調に。

治法

  • 理気調中: 気の流れを整え、中焦を調える。
  • 疏肝解鬱 肝気を伸ばし、気機を円滑にする。
  • 昇清降濁: 乱れた昇降を正常化する。

養生の考え方

  • 情緒の安定を重視し、ストレスを溜めない。
  • 食事は規則正しく、過食を避ける。
  • 深呼吸や軽い運動で気の巡りを促す。
  • 睡眠と休養を十分に取り、正気を養う。

まとめ

気機失調は、気の昇降・出入が乱れることで生じる機能的失調の総称です。
治療では理気疏肝調中を基本とし、心身のバランスと生活習慣の調整が重要な鍵となります。

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