鍼灸治療では、刺鍼は気を調整する操作であると同時に、邪気(じゃき)を処理する操作としても理解されます。
東洋医学では、病気の多くは邪気が体内に侵入したり、体内に停滞したりすることによって生じると考えられています。
そのため刺鍼は、単に症状を抑えるのではなく、邪気を動かし・散らし・排出することで、体の状態を整える治療として行われます。
邪気とは何か
邪気とは、人体の正常な生理機能を乱す病因となる気の総称です。
外部から侵入するものと、体内で生じるものがあります。
① 外邪(外感邪気)
これらは自然界の気候変化が人体に影響したもので、皮膚・経絡を通じて体内へ侵入します。
② 内生邪気
- 内風
- 内寒
- 内湿
- 内燥
- 内火
臓腑機能の失調によって体内で発生する邪気です。
さらに病理産物として
なども広い意味で邪気として扱われます。
刺鍼による邪気操作の基本
刺鍼によって邪気に働きかける方法は、大きく次の三つに整理できます。
① 邪気を散らす(祛邪)
体表や経絡に停滞している邪気を拡散させる操作です。
- 風邪
- 表証
- 経絡の阻滞
などに用いられ、刺鍼によって邪気を分散させて流れを回復させます。
② 邪気を下す(瀉邪)
体内にこもった邪気を沈降・排出させる操作です。
などに対して行われ、刺鍼により過剰な邪気を下方へ導くように働きかけます。
③ 邪気を追い出す(排邪)
体表や経絡に存在する邪気を体外へ排出させる操作です。
- 外感病
- 風寒表証
- 初期の感染症
などで用いられ、経絡の流れを利用して邪気を体外へ発散させます。
邪気と経絡
邪気は多くの場合、まず体表の経絡に侵入します。
その後、経絡を通じて徐々に深部へ進行します。
その進行は一般に以下のように考えられます。
- 皮毛
- 経絡
- 臓腑
このため鍼灸では、邪気が深部に入る前に経絡レベルで処理することが重要とされています。
刺鍼による邪気の移動
刺鍼によって気機が動くと、それに伴って邪気も移動します。
例えば以下のような変化が起こると考えられます。
- 停滞していた邪気が動き始める
- 経絡の流れに沿って移動する
- 体表へ発散される
- 下方へ排出される
つまり刺鍼とは、邪気を直接除去するというより、邪気を動かして処理する操作といえます。
正気と邪気の関係
東洋医学では、病気の経過は正気と邪気の力関係によって決まると考えられます。
- 正気が強い → 邪気は排除される
- 邪気が強い → 病気が進行する
刺鍼では
- 正気を整える
- 気機を調整する
- 邪気を動かす
という三つの作用が組み合わさることで、最終的に邪気の排除が起こると考えられています。
刺鍼とは「邪気処理の技術」
以上をまとめると、刺鍼は次のような働きを持つ治療操作といえます。
- 経絡の流れを回復する
- 気機を動かす
- 邪気を散らす
- 邪気を排出する
つまり鍼灸治療において刺鍼とは、気を調整しながら邪気を処理する技術であり、正気と邪気のバランスを整えることによって治癒へ導く治療法と理解することができます。
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