概念
清熱利口(せいねつりこう)とは、体内にこもった熱邪を清し、口腔や咽喉の熱証を鎮め、口腔の腫痛・潰瘍・口渇などを改善する治法である。
東洋医学では「口は脾の竅」「舌は心の苗」とされ、脾胃・心・胃・肝経に熱がこもると、口舌生瘡・咽喉腫痛・口渇・口臭などの症状が現れる。
清熱利口法は、熱邪を取り除き、津液を回復し、口腔の機能と潤いを取り戻すことを目的とする。
所属
主に清熱法に属し、心火上炎・胃熱熾盛・肝火上炎・陰虚火旺などによって起こる口内熱証に応用される。
また、病因に応じて養陰・瀉火・解毒・化湿などの治法を兼ねることが多い。
効能
- 体内の熱邪・火邪を清する。
- 口腔・舌・咽喉の腫痛や潰瘍を改善する。
- 口渇・口臭・口苦を除く。
- 津液を生じ、口腔の潤いを回復する。
- 心・胃・肝の実熱を鎮める。
主治
- 心火上炎:口舌生瘡、口渇、煩躁、顔面紅潮、小便赤。
- 胃熱熾盛:口臭、歯痛、口内炎、歯齦腫脹、便秘。
- 肝火上炎:口苦、煩躁、目赤、いらいら、側頭部痛。
- 陰虚火旺:口乾舌紅、口腔乾燥、舌裂、ほてり、寝汗。
- 湿熱上攻:口内の粘つき、苦味、口腔の重だるさ、舌苔黄膩。
病機
飲食の不摂生・情志失調・外邪侵入などにより、心火・胃火・肝火・湿熱が上炎して口腔部に熱を生じると、津液が損傷し、口渇・口内炎・口臭などが現れる。
また、陰虚によって虚熱が生じた場合にも、口乾・舌紅・裂紋などの症状が起こる。
清熱利口法は、清熱瀉火・解毒・養陰・化湿などを用いて熱邪を除き、津液の生成を助け、口腔環境を整える治法である。
代表方剤
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):心火旺盛・口舌生瘡・煩躁。
- 清胃散(せいいさん):胃火上炎による歯痛・口臭・歯齦腫痛。
- 瀉心湯(しゃしんとう):心胃実熱による口内炎・舌腫・口渇。
- 涼膈散(りょうかくさん):上焦実熱による口舌の潰瘍・咽痛・便秘。
- 養陰清肺湯(よういんせいはいとう):陰虚火旺による口乾・咽喉乾燥。
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):肝胆実熱による口苦・目赤・煩躁。
臨床応用
- 口内炎・舌炎・歯肉炎・咽喉腫痛。
- 口渇・口苦・口臭などの口腔熱症状。
- 熱性疾患や感染症に伴う口内熱感。
- 胃炎・口腔潰瘍・口角炎など。
- 陰虚体質による慢性の口乾。
使用上の注意
- 実熱の場合は清熱瀉火を主とし、虚熱では養陰清熱を行う。
- 脾胃虚寒による口の異常には用いない。
- 過度の清熱薬の使用は脾胃を損傷しやすいので慎用する。
- 熱証の有無を見極め、陰虚や津液不足との鑑別が重要。
- 慢性疾患や口腔乾燥症では補陰薬を併用する。
まとめ
清熱利口法は、心火・胃火・肝火などの熱邪を清し、口腔や舌の熱証を改善する治法である。
代表方剤は黄連解毒湯・清胃散・涼膈散・養陰清肺湯などであり、清熱瀉火・養陰・解毒・化湿を組み合わせて応用する。
口内炎・歯痛・口渇・口苦・口臭などの症状に広く用いられ、心胃の熱を去り、津液を回復して口腔を清潤に保つことを目的とする。
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