安神利胆とは

概要

安神利胆（あんしん りたん）は、肝胆の鬱熱・痰濁上擾による精神不安・不眠・煩躁などを鎮め、胆を清し、心神を安んずる治法である。 肝胆は疏泄と決断を司り、その気機が鬱滞し熱化すると、痰濁や火邪が上擾して心神を乱す。 そこで胆を清し、痰熱を去り、心神を安定させることを目的とする。 主に胆火上擾・痰熱内擾・肝胆不和などに応用される。

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主な適応症状

• 不眠・多夢・驚きやすい・易怒
• 心悸・胸悶・焦燥・煩熱
• 苦味・口乾・めまい・悪心
• 胆怯驚恐・決断力低下・易驚反応
• 舌紅・苔黄膩・脈弦数または滑数

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主な病機

• 胆火上擾 → 心神不安：胆熱が上炎し、精神が安らがない。
• 痰熱内擾 → 清竅閉塞：痰火が上擾して胸中・頭部を悶塞。
• 肝胆不和 → 気機不暢：情志不遂やストレスにより気鬱化火。
• 心胆気虚 → 胆怯驚恐：胆気不足で決断力が低下し、易驚となる。

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主な配合法

• 安神利胆＋清熱化痰：痰熱上擾による煩躁・不眠（例：温胆湯）。
• 安神利胆＋疏肝解鬱：肝胆鬱熱による焦燥・不安（例：加味逍遙散合温胆湯）。
• 安神利胆＋清心安神：胆火犯心による不眠・驚悸（例：黄連温胆湯）。
• 安神利胆＋養心安神：心胆気虚・胆怯驚恐（例：酸棗仁湯合温胆湯）。
• 安神利胆＋理気和胃：痰気上逆・悪心嘔吐（例：半夏厚朴湯合温胆湯）。

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代表的な方剤

• 温胆湯（うんたんとう）：痰熱内擾による不眠・多夢・焦燥・胸悶。
• 黄連温胆湯（おうれんうんたんとう）：胆火上擾・心神不寧・煩躁不眠。
• 加味温胆湯（かみうんたんとう）：肝胆鬱熱・情志不暢による不眠・煩躁。
• 酸棗仁湯合温胆湯：心胆気虚・胆怯驚恐・不眠多夢。
• 半夏厚朴湯合温胆湯：痰気鬱結・胸脘痞悶・嘔吐・悪心。

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臨床でのポイント

• 安神利胆は、胆火や痰熱の上擾による精神不安・不眠に用いる。
• 心神不安が主なら安神薬を、痰熱が強ければ清熱化痰薬を重視する。
• 胆怯や易驚の傾向には、気血を補い心胆を養う薬を併用する。
• 情志不暢やストレスが誘因の場合は、疏肝理気薬を組み合わせる。
• 実熱証か虚証かを見極め、虚実夾雑の場合は温胆湯系方剤を中心に加減する。

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まとめ

安神利胆は、胆火上擾・痰熱内擾・肝胆不和による不眠・煩躁・驚恐などに対する治法である。 胆の清化作用を回復し、痰熱を去って心神を安定させる。 温胆湯・黄連温胆湯・加味温胆湯などが代表的処方であり、 神経症・不眠・ストレス性不安などに広く応用される。