概要
治頭痛(ちずつう)とは、 頭痛を主症とする病証に対して、原因に応じて治法を立て、痛みを除くことを目的とする治法である。 中医学では「頭は諸陽の会」「清陽の府」とされ、諸経脈が頭に上行するため、 外邪侵襲・内傷虚損・気血失調などにより頭痛が発生する。 したがって、治頭痛法は単なる鎮痛ではなく、 病因(風寒・風熱・風湿・気血・痰瘀など)を弁じて治療することを重視する。
病因分類と治法
頭痛は大きく「外感」と「内傷」に分けられる。以下に主な類型を示す。
① 外感頭痛(風邪による頭痛)
- 風寒頭痛:悪寒・発熱・頭痛・無汗・項背の強ばり。 → 治法:疏風散寒・止痛。代表方:川芎茶調散、九味羌活湯。
- 風熱頭痛:発熱・微悪風・頭痛・目赤・口渇。 → 治法:疏風清熱・止痛。代表方:銀翹散、桑菊飲、菊花茶調散。
- 風湿頭痛:頭重如裹(頭が包まれるように重い)、倦怠、悪心。 → 治法:祛風除湿・和中止痛。代表方:藿香正気散、羌活勝湿湯。
② 内傷頭痛(臓腑虚実による頭痛)
- 肝陽上亢:頭痛・眩暈・顔赤・煩躁。 → 治法:平肝潜陽・鎮痛。代表方:天麻鉤藤飲。
- 気血両虚:鈍痛・めまい・倦怠・顔色蒼白。 → 治法:補気養血・止痛。代表方:八珍湯、加味帰脾湯。
- 腎虚頭痛:頭部が空虚感、耳鳴、腰膝酸軟。 → 治法:補腎益精・止痛。代表方:大補元煎、六味地黄丸。
- 痰濁中阻:頭重・胸悶・悪心。 → 治法:化痰降濁・止痛。代表方:半夏白朮天麻湯。
- 瘀血阻絡:刺痛・固定痛・夜間増悪。 → 治法:活血化瘀・通絡止痛。代表方:血府逐瘀湯。
主な作用
- 祛風止痛:外感風邪による頭痛を除く。
- 清熱止痛:風熱・肝陽上亢による頭痛を鎮める。
- 化湿化痰:痰濁による頭重を改善。
- 活血通絡:瘀血阻滞による刺痛を解消。
- 補虚止痛:気血・腎精の不足による虚痛を補う。
臨床応用の要点
- 外感性は急性・短期間・表証を伴う → 祛風解表を重視。
- 内傷性は慢性・再発性・虚実混在 → 臓腑経絡の調整が中心。
- 「痛みの部位」も重要:
- 前頭部 → 陽明経
- 側頭部 → 少陽経
- 後頭部 → 太陽経
- 頭頂部 → 厥陰経
代表方剤まとめ
| 病因 | 治法 | 代表方剤 |
|---|---|---|
| 風寒 | 疏風散寒・止痛 | 川芎茶調散、九味羌活湯 |
| 風熱 | 疏風清熱・止痛 | 銀翹散、菊花茶調散 |
| 風湿 | 祛風除湿・止痛 | 羌活勝湿湯 |
| 肝陽上亢 | 平肝潜陽・鎮痛 | 天麻鉤藤飲 |
| 気血両虚 | 補気養血・止痛 | 八珍湯 |
| 腎虚 | 補腎益精・止痛 | 六味地黄丸 |
| 痰濁 | 化痰降濁・止痛 | 半夏白朮天麻湯 |
| 瘀血 | 活血化瘀・止痛 | 血府逐瘀湯 |
まとめ
治頭痛法は、頭痛の根本原因を辨別し、 祛風・散寒・清熱・化湿・活血・補虚などを組み合わせて痛みを除く治法である。 単に鎮痛を求めるのではなく、邪を除き、正を扶けて経絡を通すことが目的。 代表方剤には、川芎茶調散・羌活勝湿湯・天麻鉤藤飲・半夏白朮天麻湯・血府逐瘀湯などがある。
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