概要
清熱瀉下（せいねつしゃげ）とは、 体内にこもった実熱（特に腸胃・大腸などの裏熱）を清し、瀉下作用によって邪熱や積滞を排出する治法である。 熱邪が裏に結んで津液を消耗し、便秘・腹満・煩熱・口渇などが起こるときに用いる。 主に実熱が裏に滞り、大便が秘結した「熱結便秘」や「陽明腑実証」に適応する。
つまり、「熱を清し、腸を通じる」ことで、熱邪を下から追い出して病邪を解くのが清熱瀉下法の目的である。
主な作用
すなわち、清熱瀉下法は熱邪が腸胃に結して生じた実熱便秘や裏熱症状を治すための基本治法である。
主な適応症状
- 大便秘結・腹満・腹痛・硬便
- 潮熱・煩躁・口渇・口苦
- 顔面紅潮・目赤・咽痛・発熱
- 舌紅・黄苔・脈沈実または滑実
- 熱積による痔・腫瘍・皮膚の膿腫など
このような症状は、陽明腑実証（ようめいふじつしょう）、すなわち胃腸に熱と滞が結して起こることが多い。
主な病機
- 熱結腸胃：高熱・口渇・便秘・腹満。
- 燥熱傷津：津液が損なわれ、便が硬く出にくい。
- 熱毒内結：熱毒が腸にこもり、腫痛や出血を伴う。
このため、清熱瀉下法は瀉熱・潤腸・解毒・行気を兼ねて用いられることがある。
主な配合法
- 清熱瀉下＋潤腸通便：津液不足による便秘（例：麻子仁丸）。
- 清熱瀉下＋解毒：熱毒結実（例：大黄牡丹皮湯）。
- 清熱瀉下＋理気：気滞を伴う腹満（例：大承気湯＋枳実・厚朴）。
- 清熱瀉下＋養陰：陰虚を兼ねる便秘（例：増液承気湯）。
- 清熱瀉下＋活血：瘀血を伴う腸癰・月経不調（例：桃仁承気湯）。
代表的な方剤
- 大承気湯（だいじょうきとう）：瀉下攻裏・清熱除煩。陽明腑実証に。
- 小承気湯（しょうじょうきとう）：瀉下緩和・除熱消滞。軽度の熱結に。
- 調胃承気湯（ちょういじょうきとう）：緩下清熱・和胃潤燥。胃腸の熱便秘に。
- 麻子仁丸（ましにんがん）：潤腸通便・清熱。燥熱便秘に。
- 桃仁承気湯（とうにんじょうきとう）：活血破瘀・清熱瀉下。瘀熱結実に。
- 大黄牡丹皮湯（だいおうぼたんぴとう）：清熱瀉下・活血散結。腸癰（虫垂炎）に。
臨床応用のポイント
- 便秘・腹満・実熱の所見（舌苔黄厚・脈実）を確認して用いる。
- 虚証者には慎用または補気・養陰薬を併用する。
- 下痢・脾虚・体力低下時には禁忌。
- 熱結が解けたら速やかに瀉下薬を中止する。
まとめ
清熱瀉下法は、腸胃の実熱や熱毒がこもって起こる便秘・腹満・発熱などを、熱を清し便を通じて治す方法である。 代表方剤には大承気湯・小承気湯・調胃承気湯・麻子仁丸・桃仁承気湯などがあり、 熱結便秘や腸癰、陽明腑実証に広く用いられる。
0 件のコメント:
コメントを投稿