概念
寧神安眠（ねいしんあんみん）とは、心神を安定させて精神を鎮め、安らかな睡眠を導く治法である。
主に心神不安・陰血不足・心脾両虚・肝火擾心などによって起こる、不眠・多夢・驚きやすい・心悸などの症状に対して用いられる。
寧神安眠法は、心神を安らげ、陰陽の調和を取り戻し、睡眠の質を改善することを目的とする。
所属
安神法の一種であり、主に寧神（精神を落ち着かせる）と養心（心血・心陰を補う）を兼ねる。
また、心脾両虚では補益法、肝火擾心では清瀉法と併用される。
効能
- 心神を鎮めて安眠を促す。
- 心血・心陰を養い、神志を安定させる。
- 肝火や痰熱による心神の擾乱を鎮める。
- 情緒不安・焦燥・多夢・不眠などを改善する。
- 気血・陰陽の調和を整え、精神活動を安定させる。
主治
- 心脾両虚：不眠、多夢、健忘、倦怠、食欲不振。
- 心陰不足：入眠困難、夢多、五心煩熱、口乾。
- 肝火擾心：易怒、頭痛、めまい、寝付きが悪い。
- 痰熱擾心：不眠、胸悶、痰多、煩躁。
- 心胆気虚：驚きやすく不眠、悪夢、易恐。
病機
睡眠は心神の安定と密接に関係している。
心は神を蔵し、心血・心陰・心気の充実によって神志は安らぐ。
しかし、過労・思慮過度・情志失調・熱邪内擾などにより、
心神が不安定になると、入眠困難・夢多・不安・焦燥を生じる。
寧神安眠法は、心を養い神を寧めることで、心神の帰蔵と睡眠の正常化を図る。
代表方剤
- 酸棗仁湯（さんそうにんとう）：心肝血虚による不眠、多夢。
- 天王補心丹（てんのうほしんたん）：心陰不足による不眠、心煩、健忘。
- 帰脾湯（きひとう）：心脾両虚、不眠、健忘、倦怠。
- 黄連阿膠湯（おうれんあきょうとう）：心火擾心、煩躁、不眠。
- 温胆湯（うんたんとう）：痰熱擾心、不眠、胸悶、多夢。
臨床応用
- 入眠困難・途中覚醒・浅い眠り。
- 精神不安・焦燥感・イライラ。
- 心悸・健忘・多夢・不安神経症。
- うつ状態・更年期の不眠・過労による睡眠障害。
- 睡眠の質を改善し、心身の安定を促す補助療法。
使用上の注意
- 実熱・肝火が強い場合は、清熱・瀉火薬を併用する。
- 心脾両虚には、補気養血薬を併用して心神を養う。
- 痰熱や瘀血がある場合は、化痰・活血薬を加える。
- 長期使用は体質や証に応じて調整することが望ましい。
まとめ
寧神安眠法は、心神の不安を鎮め、心血・心陰を養い、安らかな眠りをもたらす治法である。
主に心心脾両虚・心陰不足・肝火擾心などの不眠に用いられ、代表方剤は酸棗仁湯・天王補心丹・帰脾湯など。
治療の要点は寧神・養心・調気・安眠にある。
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