祛邪とは

概念

祛邪(きょじゃ)とは、体内に侵入・停滞した病邪(外邪・内邪)を取り除き、正気の回復を図る治法である。
東洋医学では、風・寒・暑・湿・燥・火などの外邪や、痰・瘀血・食滞・湿濁などの内邪が体内にとどまると、気血津液の巡りが阻害され、諸病を発生させる。
祛邪法は、病邪を駆除・排出し、人体の防御機能を回復させることを目的とする。


所属

主に攻邪法の総括概念であり、解表清熱攻下利水化痰消導活血化瘀などの各治法を包括する。


効能

  • 病邪を取り除く。
  • 気血津液の巡りを回復する。
  • 炎症・腫脹・疼痛・悪寒発熱などの病邪症状を改善する。
  • 体内の病理産物(痰・瘀血・湿濁など)を排除する。
  • 正気の回復を助け、抵抗力を高める。

主治

  • 外感風寒・風熱:悪寒発熱、頭痛、咳嗽。
  • 内熱・炎症:発熱、咽痛、口渇。
  • 痰湿:咳痰、胸満、重だるさ。
  • 瘀血:刺痛、腫脹、血瘀症状。
  • 食滞:食後膨満、嗳腐、便秘。
  • 湿濁:浮腫、尿少、倦怠感。

病機

外邪侵襲や内生痰湿・瘀血などにより、人体の正気と邪気が相争うことで病が成立する。
祛邪は、邪気を取り除き、正気を保護しつつ体内環境を回復する治法である。
必要に応じて、補正と兼用し、「祛邪扶正」を基本とする。


代表方剤

  • 麻黄湯(まおうとう):風寒表邪を発散。
  • 銀翹散(ぎんぎょうさん):風熱邪を清解。
  • 麻子仁丸(ましにんがん):燥熱便秘を攻下。
  • 五苓散(ごれいさん):利水滲湿し水滞を除く。
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):痰湿と気滞の除去。
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):瘀血排除。

臨床応用

  • かぜ・インフルエンザ・急性上気道炎。
  • 発熱・咽喉痛・炎症性疾患。
  • 浮腫・めまい・胃腸の停滞。
  • 気滞・痰湿による胸満・咳痰。
  • 瘀血性疼痛・月経不順。

使用上の注意

  • 正気虚弱の場合、過度の攻邪は避ける。
  • 慢性疾患・虚証の場合は補気・補血を併用。
  • 汗法・下法などは体力に応じて慎重に用いる。
  • 陰虚熱の際、過度な清熱は陰液を損なう。

まとめ

祛邪法は、体内に停滞した病邪を除去し、正気を回復する根本治法である。
外感・内傷を問わず幅広く用いられ、解表清熱化痰攻下利水活血などの治法を含む。
臨床では、祛邪と扶正のバランスが重要となる。

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