肝(かん) は、東洋医学において「疏泄を主る(気の流れを調える)」「蔵血を主る(血を貯蔵し全身へ配分する)」などの働きを持つ重要な臓です。
肝の不調は、気・血・陰陽のバランスに乱れを生じやすく、精神状態や消化、循環、筋・目など多方面に影響を及ぼします。
ここでは、肝に関する代表的な弁証パターンをまとめます。
肝気の異常
- 肝気鬱結(かんきうっけつ): 気の流れが滞り、胸脇の張りや抑うつ感が現れる。
- 肝気横逆(かんきおうぎゃく): 肝気が横にあふれて脾胃を犯し、胃痛・嘔吐・下痢などを引き起こす。
- 肝気上逆(かんきじょうぎゃく): 気が上へ逆流し、頭痛・めまい・怒りっぽさが出る。
肝火・肝陽の異常
- 肝火上炎(かんかじょうえん): 肝に火が盛んになり、頭痛・目赤・口苦・怒りやすさを伴う。
- 肝陽上亢(かんようじょうこう): 陰虚を背景に肝陽が抑えられず、めまい・耳鳴り・頭痛。
- 肝風内動(かんぷうないどう): 肝陽や熱の影響で風が内生し、ふるえ・痙攣・眩暈が起こる。
肝血の異常
- 肝血虚(かんけっきょ): 血が不足してめまい・爪の異常・筋のひきつり・月経不調が出やすい。
- 肝血不足(かんけつぶそく): 肝血虚とほぼ同義で扱われる。
肝陰の異常
- 肝陰虚(かんいんきょ): 陰が不足し、虚熱・ほてり・目の乾燥・不眠がみられる。
複合的なパターン
- 肝鬱脾虚(かんうつひきょ): 肝気鬱結が脾を傷り、食欲不振・倦怠感を生じる。
- 肝鬱化火(かんうつかか): 気の停滞が熱化し、怒りっぽさや胸脇の灼熱感が出る。
- 肝腎陰虚(かんじんいんきょ): 慢性病や加齢により肝腎の陰が不足し、めまい・耳鳴り・腰膝のだるさ。
まとめ
肝は気・血・陰陽のバランスに大きく関与するため、その病理パターンは多岐にわたります。
それぞれの特徴を理解することは、弁証論治を行ううえで欠かせません。
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