本章の目的
本章では、一見よく似た舌脈所見を示す症例を並べ、どこを根拠に病機を鑑別するかを明確にする。
舌脈診において重要なのは「似ている所見の中の違い」に気づくことであり、その違いが治法選択を左右する。
鑑別① 痰湿中阻 vs 湿熱中阻
ケースA:痰湿中阻
- 舌所見:淡胖、歯痕
- 舌苔:白膩、厚
- 脈所見:滑
鑑別ポイント:
舌質が淡で冷性、苔は白膩。湿が主体で熱象が乏しい。
ケースB:湿熱中阻
- 舌所見:やや紅、胖
- 舌苔:黄膩
- 脈所見:滑数
鑑別ポイント:
舌質・舌苔ともに熱象を帯び、脈が数を呈する。
鑑別② 肝気鬱結 vs 瘀血内阻
ケースA:肝気鬱結
- 舌所見:淡紅、舌辺やや紅
- 舌苔:薄白
- 脈所見:弦
鑑別ポイント:
色調は比較的正常で、動きの滞りが主体。可逆性が高い。
ケースB:瘀血内阻
- 舌所見:紫暗、瘀点あり
- 舌苔:薄白
- 脈所見:渋・弦
鑑別ポイント:
舌色の変化が決定的。病変は固定的で慢性化傾向。
鑑別③ 陰虚内熱 vs 実熱
ケースA:陰虚内熱
- 舌所見:紅、痩薄、裂紋
- 舌苔:少苔〜剥苔
- 脈所見:細数
鑑別ポイント:
舌苔の少なさと舌質の痩薄が虚を示す。
ケースB:実熱
- 舌所見:紅、やや胖
- 舌苔:黄厚
- 脈所見:洪数
鑑別ポイント:
苔が厚く、脈に力がある点が実証の決め手。
鑑別④ 脾気虚 vs 脾陽虚
ケースA:脾気虚
- 舌所見:淡、胖大、歯痕
- 舌苔:薄白
- 脈所見:虚・緩
鑑別ポイント:
寒象が目立たず、機能低下が主体。
ケースB:脾陽虚
- 舌所見:淡白、胖、湿潤
- 舌苔:白滑
- 脈所見:沈遅・弱
鑑別ポイント:
湿潤な舌と沈遅脈が冷えを示す。
まとめ
鑑別の要点は、舌脈全体の主調(寒熱・虚実)と、決定的な一点を見逃さないことである。
似た所見ほど丁寧に比較することで、治法の精度は大きく向上する。
0 件のコメント:
コメントを投稿