寒証・陽虚の治法

概要

寒証・陽虚の病機は、体内の陽気不足や寒邪の侵襲によって生じます。陽気が不足すると温煦作用・推動作用が弱まり、気血の運行が滞り、水湿の代謝も障害されます。そのため寒冷感、四肢厥冷、腹痛や泄瀉、浮腫、小便不利などが見られます。治法は「温補」と「回陽」を中心に展開され、寒邪を散じ、陽気を回復させることを目的とします。

代表的な治法分類と内容

  1. 温中散寒

    • 中焦の寒を温め、脾胃の機能を回復させる。

    • 用途:脾胃虚寒による腹痛、泄瀉、食欲不振など。

  2. 温中健脾

    • 脾陽を温めて健運を助け、寒による消化吸収障害を改善する。

  3. 温中化湿

    • 中焦を温めながら湿を散じ、痰飲・水湿停滞を解消する。

  4. 温陽益腎

    • 腎陽を補い、水液代謝や生殖機能を強める。

  5. 温陽化湿

    • 温陽の力で湿を化し、水湿停滞による浮腫や痰飲を改善する。

  6. 温陽化気

    • 陽気を補い、気化作用を促して小便不利・水腫を改善する。

  7. 温陽利水

    • 温陽により膀胱の気化を助け、水道を通調する。

  8. 温陽散寒

    • 温陽で寒邪を散らし、寒冷感・疼痛を改善する。

  9. 温陽健脾

    • 脾陽を補い、運化機能を回復し、水湿停滞を解消する。

  10. 温陽益気

    • 温陽と益気を兼ね、陽虚兼気虚の状態を改善する。

  11. 温陽化飲

    • 陽気を補い、痰飲を温化して去る。

  12. 温補腎陽

    • 腎陽を直接補益し、命門火を温める。

  13. 温腎助陽

    • 腎陽を温めて助け、生殖・排尿・納気機能を改善する。

  14. 温腎化気

    • 腎陽を温めて気化を促進し、利水・通淋を助ける。

  15. 温補大腸

    • 大腸の陽気を温補し、虚寒による便秘を治す。

  16. 温経散寒

    • 経脈を温め寒を散らし、寒凝による痛みや瘀血を改善する。

  17. 固脱

    • 大量の出血や下痢・汗出などによる陽気暴脱を固め止める。

  18. 回陽救逆

    • 亡陽危証に対し、速やかに陽気を回復し四逆を救う。

  19. 回陽固脱

    • 回陽と固脱を兼ね、陽虚欲脱の重症例に用いる。

  20. 固脱回陽

    • 「回陽固脱」と同義、順序強調の用法。

  21. 固脱救急

    • 急迫な亡陽証に用い、陽気を回復させて危急を救う。

  22. 回陽益気

    • 回陽と益気を兼ね、陽気不足かつ気虚の重症に対応。

  23. 回陽散寒

    • 回陽により寒邪を散らし、寒厥や四肢厥冷を救う。

  24. 扶陽助運

    • 陽気を補い、脾腎の運化機能を回復させる。


まとめ

このグループの治法は「温」「補」「回陽」「固脱」の四つの要素を軸にしています。

  • 中焦 → 温中

  • 脾腎 → 温陽

  • 大腸・経脈 → 温補・温経

  • 急証 → 回陽・固脱

臓腑別に細分されつつも、いずれも「陽を温め、寒を除き、虚を補い、脱を固める」という共通の目的を持ちます。

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